現場任せの安全管理露呈 コースター事故から1週間
管理手法、業界での共有が課題
東京都文京区の遊園地「東京ドームシティアトラクションズ」のコースター転落死事故の発生から6日で1週間。警視庁の捜査で、安全管理をおろそかにしていた同遊園地の運営上の問題点が浮かび上がってきた。遊戯施設の安全運行を確保するための統一的な規制はなく、施設ごとに「現場任せ」になっているのが実情。専門家は「業界全体で安全に関する情報を共有すべきだ」と警鐘を鳴らす。
運営会社の「東京ドーム」(同区)は事故後、同遊園地の営業を休止。普段なら親子連れやカップルらでにぎわう土曜日の5日もゲートは閉ざされ、閑散としていた。
警視庁のこれまでの捜査で、死亡した東京都羽村市の会社員、倉野内史明さん(34)の体を固定する安全バーは、発車時からロックされていなかったとみられる。倉野内さんは身長約185センチ、体重130キロ以上だった。コースターの乗車制限に身長や体重の上限はなかった。
バーの装着を確認する担当だった女性アルバイトは、同庁の調べに「目視で確認しただけだった。バーを必ず手で押して確認するようにとの指導は受けていなかった」と説明。他の従業員も同様の証言をしており、目視確認が常態化していた疑いが強い。
コースターの納入業者が同遊園地に渡した仕様書には「少しでも不確実と思われる場合、手で触って確認や修正を行う」と記載されていたが、同遊園地の手引書には明記されておらず、「現場任せ」(東京ドーム)で、安全管理に問題があった可能性が高まっている。
4年前、20人が死傷した大阪府吹田市の「エキスポランド」コースター事故を受け、国土交通省は建築基準法の施行規則を改正、超音波などを用いた精密な点検実施を課すなど設備面のチェックを強化した。
しかし、安全器具の装着確認など運行管理の方法を規定した法令はない。「日本建築設備・昇降機センター」が2000年、遊戯施設の運行管理規定に盛り込むべき内容をまとめた手引書を作ったが、実際の規定作りは遊園地任せになっている。
都内のある遊園地の担当者は「機種によってスピードや安全バー、ベルトの形状は様々。安全確認の統一基準は難しい」と業界事情を強調する。
遊戯施設に詳しい日本大の青木義男教授(安全設計工学)によると、国の研究機関が昨年2月に開いたシンポジウムで大手業者が安全管理のノウハウを伝えると好評だったという。同教授は「業界で情報を共有することが必要」と指摘する。
警視庁は従業員の聴取を本格化させるとともに、押収した運転基準やアルバイトの就業規則などを分析。「現場スタッフ以外の責任も解明する」(捜査幹部)方針で、アルバイトへの指導方法も含めた東京ドームの管理体制を調べている。