コメ先物を上場申請 東穀取など、価格変動抑制へ
認可なら72年ぶり 投機資金流入懸念も
東京穀物商品取引所(東京・中央)と関西商品取引所(大阪市)が8日、農林水産省にコメ先物の試験上場を申請した。認められれば72年ぶりの上場となる。先物を活用すると農家などはコメ価格の変動リスクを軽減でき、経営の安定につながる。ただ、金融緩和に伴う余剰資金の流入で商品市場は世界的に上昇傾向にある。コメ価格の乱高下を懸念する声も出ている。
農水省は申請後3カ月の公示期間後に上場の是非を判断する。早ければ6月末に認可され、7月初めに取引が始まる。試験上場の期間は2年で、その後に両取引所は本上場の申請を検討する。
先物取引の対象は東穀取が茨城県や栃木県などの「関東産コシヒカリ」、関西商取が石川県などの「北陸産コシヒカリ」とする。
農家が先物市場を利用すると、田植えの時期にコメの先物を売ることで収穫前に販売価格を確定できる。2010年産のように販売の低迷などで販売価格が下落しても、農家は収入減を回避して経営を安定させられる。
民主党政権は前政権のコメ政策を転換。10年から農家への戸別所得補償制度を導入する一方で、取引価格の形成は市場に委ねるようにした。このため、コメ関係者の間で価格下落のリスクを回避する場を求める声が強まっていたという。
指標となる価格を形成し、コメ取引における価格の透明性を高める狙いもある。全国米穀取引・価格形成センター(東京・文京)は、取引量の減少に伴って3月末に解散する予定。農水省が独自に調査している取引価格は公表までに1カ月かかるため、市場では客観的で迅速な指標価格を求める声が出ていた。
ただ、投機マネーの流入で価格が乱高下しかねないとの見方は根強い。小麦など海外の穀物相場の高騰も「投機資金の影響が大きい」との指摘がある。国内の商品先物市場は営業規制強化などで急速に縮小しており、取引の流動性を確保できるかも課題といえそうだ。
両取引所は05年にも試験上場を申請したが、農水省は「コメの生産調整に支障をきたす恐れがある」などとして認めなかった。今回、農水省は生産・流通に影響を与えないか、取引量を十分に確保できるかなどを考慮し上場の是非を判断するとみられる。