エジプト・ムバラク大統領、近く辞任か 首相が示唆
海外メディア報道 権限委譲の観測も
【カイロ=岐部秀光】民衆による激しい退陣要求デモに直面するエジプトのムバラク大統領が9月の任期満了を前に近く辞任する見通しが強まった。シャフィク首相は大統領の辞任シナリオについて政府内で話し合いを始めたと述べ、10日中にも大統領自身が辞任を発表する可能性を示唆した。英BBCなどが報じた。スレイマン副大統領、あるいは軍に大統領権限を委譲する可能性もある。
エジプト軍の最高評議会は最高司令官であるムバラク大統領を抜きにして会議を開催。エジプト軍代表は国営テレビを通じて「国民を守るために必要な措置を講じる」と述べた。「人々の合法的な要求を支持する」とも指摘した。フェキ情報相が大統領の辞任を否定したとの情報もある。
BBCによると、与党の国民民主党(NDP)のバドラウィ幹事長はムバラク大統領が近く国民向けに話をするだろうと述べた。同党幹部はムバラク氏が権限をスレイマン副大統領に譲り渡すことを望むと述べた。ムバラク氏を象徴的な存在として大統領にとどまらせるシナリオも指摘されている。
中東の衛星テレビ局アルアラビーヤは、ムバラク大統領が紅海のリゾート地であるシャルムエルシェイクに向かったと伝えた。
エジプト軍のルウェイニ将軍は首都カイロで民衆が集まっているタハリール広場に姿を見せ「すべての要求は満たされるだろう」と述べた。
ただデモ参加者がこうした動きを受け入れて抗議運動をやめるかどうかは不明。権力の空白が生じて同国だけでなく中東地域全体に混乱を広げる恐れもある。
約30年にわたりエジプトを統治してきたムバラク氏は1月下旬から激しい反政府デモに直面。政権移行を巡る与野党の協議が難航する一方、11日には過去最大規模のデモが計画され事態の収拾がきわめて困難になっていた。
ムバラク大統領は、次回の大統領選挙には出馬しないと約束する一方、秩序ある政権移行を見届けるために任期を全うする考えを示していた。