海水注入で炉心冷却開始 福島第1原発1号機で
日本の原発史上、最悪の事故に
東日本巨大地震で被災した東京電力福島第1原子力発電所1号機について、経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後、「炉心溶融でしか考えられないことが起きている」と発表した。原子炉のある建屋が爆発、格納容器の破損はないとするが、核分裂に伴うセシウムやヨウ素を周辺から検出。東電は同日、原子炉に海水を注入し、炉心を冷やす作業を始めた。ほぼ半世紀になる日本の原発史上で、最悪の原子力事故になった。
原子炉の核燃料が溶け出す炉心溶融が起きると、制御不能のまま核分裂が連続して起き、大惨事につながりかねない。日本で原発の運転が始まって半世紀近くたつが、炉心溶融が起きた例はない。
1号機周辺では午後3時半ごろ、爆発音が聞こえ、10分後に白煙が噴出。原子炉がある建屋などの天井が崩落した。この爆発で東電の社員2人と協力会社の作業員2人がけがをし、病院に搬送された。
枝野幸男官房長官は夜の記者会見で「格納容器が爆発したわけではない」と説明した。原因に関しては「炉心の水が少なくなって発生した水蒸気が格納容器の外側の建屋との間の空間に出て水素になり、酸素と合わさって爆発した」と分析。「放射性物質が大量に漏れ出すものではない。爆発前に比べて放射性物質の濃度は上昇していない」と主張した。
東電と福島県による放射性物質の濃度のモニタリング結果も紹介。爆発直前の午後3時29分には、一般人が年間に受ける放射線量の限度(1000マイクロシーベルト)に相当する1015マイクロシーベルトに上昇したが、爆発直後の午後3時40分には860マイクロシーベルトに、午後6時58分には70.5マイクロシーベルトに下がったとしている。
今後、原子炉と格納容器の破損による災害を防ぐため、容器を海水で満たす措置をとると説明。「水を満たす措置は原子炉容器で5時間からプラス数時間、格納容器を満たすのに10日間ぐらいかかる」との見通しを示した。
経済産業省原子力安全・保安院と東京電力によると、12日午後8時20分から福島第1原発1号機に水の注入を開始。海水にホウ酸を混ぜ、炉心上部からスプリンクラーのように水を放出して冷やす。
原発は万一の事故に備え、「5重の壁」と呼ばれる構造で放射性物質を閉じ込める。今回の爆発では一番外側の原子炉建屋の破壊が確認されたが、内側の防壁は保たれている。
建屋崩壊時は、原子炉の格納容器の圧力が高まって壊れる可能性もあったため内部の空気を出す作業を進めていた。1号機は地震発生で自動停止したものの、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動せず、炉を十分に冷やせなくなっていた。
東電は12日午後、原子炉内の水位低下が進んでいると発表した。午前9時に燃料の上部50センチメートルが露出していたのが、10時30分には90センチメートル、午後1時には1.5メートルに拡大。午後3時半ごろに1.7メートルになった。燃料の長さは4メートルで全体のほぼ半分が露出していたことになる。
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