日産「リーフ」、ITが走行支援 20日発売
長距離対応なお課題
日産自動車はエコカーの本命と位置付ける電気自動車(EV)「リーフ」を20日に発売する。ハイブリッド車(HV)でトヨタ自動車やホンダに出遅れた日産はEVに社運を懸ける。ただ、1回の充電でEVが走行できる距離は200キロ。ガソリン車の3分の1程度で遠出には不安も残る。日産はIT(情報技術)を活用して運転を支援する体制をつくり普及を図る。
HVと違ってEVはバッテリーの充電が切れると動かなくなる。日産は20日までに、30分で電池容量の8割を満たせる急速充電器を、全国約200の販売店に設置。「半径40キロ圏に1カ所ずつ配備することで全国をほぼカバーできる」(日産)としている。
とはいえ、全国にガソリンスタンドが約4万あるのと比べれば不便。高速道路のサービスエリアにも充電設備は少ない。政府は2020年までに急速充電器を5000基設置する目標を掲げるが、当面、EVの購入者は充電設備の多い都市部が中心となりそうだ。
日産はEV専用に設計した情報通信システムを構築済み。バッテリーの残量が少なくなると運転者に警告を出し、インターネット経由で最寄りの充電施設を案内する。出発前にスマートフォン(高機能携帯電話)で充電状態の確認もできる。
1970年代の石油危機、90年代の米環境規制強化――。自動車産業では過去に何度か「EVブーム」が起きてはしぼんだ。以前と違うのは「ITが格段に進歩を遂げ、それをEVで利用できるようになったこと」とリーフの開発責任者、門田英稔チーフ・ビークル・エンジニアは指摘する。
IT利用は、日産にとっても新たなビジネスチャンスを生む。
各車両からは、どんなルートで1日何時間、走行したかといった情報がデータセンターに送り込まれてくる。電池の劣化状況を調べ、新しい電池への取り換え時期を顧客に知らせることができる。古い電池を買い取って蓄電池として販売する事業にもつながる。すでに住友商事と共同出資会社を設立し、再利用の事業化を探り始めている。
車両の現在位置などが把握しやすく、1台のEVを複数の人で利用するカーシェアリングの事業展開も容易になる。