脂肪細胞ホルモンで肺の生活習慣病治療 阪大が有効突き止め
大阪大の研究グループは、ヒトの脂肪細胞で作られる善玉ホルモンが、喫煙などで起こる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に有効なことをマウス実験で突き止めたと発表した。「アディポネクチン」と呼ばれるホルモンで、メタボリック(内臓脂肪)症候群や糖尿病を防ぐ効果が知られている。これを増やせればCOPD治療に役立つ可能性がある。
阪大の武田吉人助教と中西香織医師らの成果。COPDは喫煙や大気汚染が原因で肺気腫や気管支炎になり、息切れやせきやたんが続く。肺の生活習慣病といわれ、国内患者は500万人以上とみられるが、根本的な治療法はない。
研究チームはアディポネクチンを体内で作れないように遺伝子操作したマウスを調べた。高齢になると肺の組織が壊れ、COPDとよく似た症状が出た。血管を保護する働きを持つアディポネクチンが失われ、肺の構造を保てなくなった。
生後8週のマウスにアディポネクチンを外から補うと、肺の構造がほぼ正常に戻り、2~3割低下していた呼吸機能もほぼ正常まで回復した。今後、ヒトでも同様の効果があるか調べる。
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され動脈硬化などを防ぐ。肥満や喫煙で分泌量が減ると糖尿病などを発症しやすくなるとされる。成果は米医学誌電子版に掲載された。