菅政権、打開策なく危険水域に
菅直人内閣の屋台骨を支え、次の首相の最有力候補と目された前原誠司外相が辞任を表明した。献金問題の混乱を最小限に抑え、2011年度予算案の関連法案を成立させる可能性を残すための苦渋の選択。それでも与野党対立が収まる保証はなく、看板閣僚を失った政権は危険水域に突入した。
「私心を捨てた大局的な判断」を語っていた前原氏は、辞任の理由を予算審議の停滞と外交空白を招かないためと説明した。居座れば、野党からの攻撃に拍車がかかる。民主党の小沢一郎元代表の問題に続き「クリーンな政治」を標榜する政権の信頼が決定的に損なわれる恐れがあった。
元代表の「政治とカネ」の問題で強硬派だった前原氏の次の党代表選への出馬は難しい。進退問題が長期化した場合、将来にわたってその可能性を失うことにもなりかねない。決断の底流にはそうした判断もあったと、周辺は解説する。
日本経済新聞社の世論調査で内閣支持率は2月末の時点で22%。知名度のある前原氏の辞任は、支持率のさらなる押し下げ要因になる公算が大きい。辞意を伝えにきた前原氏を、首相が最後まで慰留したのは確たる見通しが立たない不安の裏返しかもしれない。
前原氏の辞任にあたって野党側と事態収拾を約束した形跡はみられない。かえって野党が勢いづき、多数を握る参院で他の閣僚の問責決議案を連発する可能性も否めない。対立がそこまで行き着いた場合は予算関連法案の成立は絶望的になる。
「おれは絶対に辞めない」。首相は周囲に衆院解散権の行使もちらつかせている。満身創痍(そうい)の首相は予算関連法案を巡る国会の批判が野党に向かうことに望みをつなぐが、目の前の霧は一層濃くなってきた。(政治部 犬童文良)