法人税5%下げ財源、経産省が5000億円規模を提示
政府税調、財源上積みを要求
政府税制調査会は8日の全体会合で、法人課税の実効税率を5%引き下げるための財源確保策などを協議した。経済産業省は減価償却制度の見直しなど、企業負担による合計5000億円規模の財源案を提示。ただ少なくとも1兆5000億円が必要とされる5%分の財源額と依然大きな開きがある。税制改正論議が大詰めを迎え、攻防が激しさを増している。
法人課税は国税と地方税を合わせた実効税率で5%程度を引き下げる方向で最終調整している。8日の会合では、経産省の池田元久副大臣が産業界と調整した財源案を提示。設備投資などの実施直後は多めに減価償却できる制度の見直し、欠損金(赤字)を翌期以降に繰り越して所得と相殺できる制度の制限を軸に、5000億円台前半の財源を賄う内容だ。
【経済産業省が8日に提示した主な財源案】 →全体で5000億円台前半を確保 | |
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項 目 | 見直し内容 |
減価償却の見直し(2000億円規模) | 購入した設備を前倒しで減価償却できるペースを現行の「世界最速」から「英米並み」に2割緩和 |
繰越欠損金の使用制限(2000億円規模) | 欠損金を使って繰り越し控除できる範囲を控除前所得の8割に制限。大法人に限定 |
【それ以外の主な財源候補】 →3000億円程度の上積みができるかが焦点 | |
繰越欠損金の使用制限の拡大 | 財務省は控除前所得の5割に制限することを提案 |
研究開発減税の縮小 | 研究開発費の総額に対する税額控除の限度額の縮小案などが浮上 |
貸倒引当金の縮小 | 金融業を除き、損金算入に制限を設定 |
事業用不動産の買い替え特例の圧縮 | 事業用不動産を買い替える際の税負担を軽減する特例措置の縮小を検討 |
これに対し、政府税調の議長役を務める五十嵐文彦財務副大臣は「さらなる尽力を」と財源の上積みを要請。池田副大臣は「(上積み財源の候補が)ないわけではない」と応じ、結論をいったん持ち越した。
経産省は財源案として示した5000億円のほか、2000億円規模の財源確保にメドをつけている。一方、税調は実効税率5%引き下げの「最低条件」として8000億円超の財源を企業負担で確保するように水面下で求めており、残る1000億円程度をどう確保するかが最大の焦点になっている。
経産省が提示した財源案の二本柱の1つは、投資直後に減価償却できる金額の圧縮だ。企業は早く減価償却できれば、技術革新などに伴う新たな投資にも迅速に対応できる。2007年度に導入した現行制度(定率法)では、耐用年数10年の設備を購入した場合、1年目に取得価額の25%を償却できるが、経産省は20%に減らす案を示した。化学メーカーや電力会社など装置産業への影響が大きいとされる。
もう1つの柱の繰越欠損金の使用制限は、企業が欠損金を翌期以降に繰り越して所得と相殺できる範囲を大企業に限って控除前の所得の8割までに制限する内容だ。その代わりに現在は7年の繰越期間を延ばす方針だ。こちらは金融機関への影響が大きい。
このほか産業活力再生特別措置法での税軽減措置の縮減も盛り込んだ。同法の認定を受けた企業が増資する際の登録免許税を通常の半分に軽減する措置などを見直す。
今後の財源上積みの候補になるのは、繰越欠損金の使用制限の強化だ。財務省は経産省案の8割から5割に引き下げるように求めている。研究開発減税を巡っては、研究開発費の総額に応じて受けられる税額控除の限度額を現行の法人税額の30%から20%に縮小する案が浮上。貸倒引当金も影響の大きい金融を除き、損金算入に制限を設ける案が出ている。
企業以外の負担による財源確保策も課題だ。相続税の増税や証券優遇税制の廃止に伴う税収増を充てる案などが浮上しているが、子ども手当の上積み財源の確保も難航しており、政府内では財源の奪い合いになっている。このため安定財源をどれだけ確保できるかは不透明な面が強い。