任天堂「3DS」発売、商戦早くも過熱
歴代最高の定価、機能向上で補う
任天堂の新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」の発売が26日に迫った。裸眼で3D(立体)の映像や写真を楽しめるほか、新しい通信機能を備える。ほとんどの家電量販店で予約分は完売した。発売当日に店頭販売があるかどうかは不透明で、なかなか入手できない状態が続きそうだ。価格は1台2万5000円と携帯ゲーム機では最高額商品。現行の「ニンテンドーDSi」より1万円、据え置き型のゲーム機「Wii」より5000円高い。商品としての価値を消費者や専門家はどうみているのか。
商戦、主戦場はネットオークション
現行の「ニンテンドーDS」シリーズは全世界で1億3000万台超(2010年6月時点)を販売した大ヒット商品。今回の3DSも前人気は上々だ。1月20日に予約が始まったアマゾンや楽天の通販サイトでは発売の数分後に完売。一部では1台3万5000円前後とプレミア価格がつき、すぐに売れた。
ネットオークション市場では一足先に熱い商戦が始まっている。ヤフーオークションなど国内の主要なネットオークション相場を調査するオークファン(東京・渋谷)によると、1日の出品数が数台程度と少なかった1月上旬から中旬にかけての平均落札金額は1台3万円超だった。現在はオークション市場への出品が増えたため、落札額は平均2万8000円前後となっている。
取引台数は今月10日までに合計3000台を超えた。送料などを含めると3万円ほどの出費となっても購入したいという消費者が多く、2万5000円という価格設定にそれほど割高感がなく、「多少割高でも早いうちに入手したい」というファンの多さを物語っている。性能が向上した分として、消費者は価格上昇を受け入れているようだ。
ゲーム業界に詳しい、生活総合情報サイト「All About(オールアバウト)」ガイドの田下広夢さんは「3D(立体)が売り物の3DSだが、ゲームを変えるのは3D以外の3つの魅力だろう」と話す。
3D以外にも3つの魅力
1つがモーションセンサーとジャイロセンサー。本体の中にあるセンサーが動きや傾きを感知し、直感的に操作できる。3月に発売予定の「スティールダイバー」という3D海戦ゲームでは、実際に潜望鏡をのぞいているように、本体を動かして周囲の様子を探ることができる。
2つめがカメラ。カメラで撮影した現実の空間に、リアルタイムでCGなどの情報を重ねるAR(拡張現実)技術で、カメラを使った遊びが広がる。3つめは大幅に強化された通信機能。ゲームを起動していないときにも利用できる「すれ違い通信」、アクセスポイントの近くに行くと勝手に接続してゲームのデータなどをダウンロードする「いつの間に通信」などだ。ユーザーが3DSを開くたびに、新しい何かがある。限られた時間のテレビCMでは伝えきれない多くのポテンシャルを秘めているという。
売れるタイミングに3つの山
ただゲーム機としては高額な商品だけに、発売直後から爆発的に売れることはなさそうだ。田下さんは「人気ソフトが発売されるタイミングによるが、5~6月と夏商戦、年末商戦の3つが売れ行き上昇のカーブを描くタイミングだ」とみる。任天堂はだれもがわかりやすい3Dを前面に出して販売し、内蔵する様々なしかけで新しい遊びを根付かせようとしている。「買った人が『(旧機種の)DSでよかったな』というようにはまずならない」(田下さん)。これまでのDSシリーズ同様に、売れ行きも飛び出してきそうだ。
(商品部 村野孝直)
モノやサービスの値段にまつわる「なぜ?」を様々な角度から掘り下げる連載。商品の種目ごとに細かく担当を受け持つ日経記者が、その担当の商品・サービスの値段の変化がなぜ起きたのか、日本だけでなく世界のトレンドまで鋭く切り込みます。
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