埋め立て時期で明暗? 千葉・浦安の液状化
東日本大震災発生から10日目の2011年3月20日、乾いた噴砂が巻き上がる千葉県浦安市の埋め立て地を歩いた。地震直後の報道では、埋め立て地全体で液状化が生じたような印象を受けたが、実態は違った。明らかに場所によって被害に差がある。
まず新浦安駅を降りると、駅前広場に設置されたエレベーター建屋が地盤面から離れて浮いている。地盤が液状化して、沈下したとみられる。
液状化で地表に噴き上がった土は既に乾いており、風や走る自動車で辺りに巻き上がっている。砂より細かいシルト状の土粒子だ。
海側に向かって歩くと、直交方向に延びる不自然な土構造物にぶち当たる。実は、これは新旧の埋め立て地の境目であることを今に伝える護岸の跡だ。この護岸より海側は、液状化被害はさらに大きかった。
液状化で平屋のコンビニが沈下
かつての護岸を越えた海側の明海地区では、歩道の側面に大量の土砂が積み上げられている。まだ湿り気があるのを見れば、それだけ噴砂の量が多かったことが分かる。
大型スーパーのイトーヨーカドーは周辺の地盤が最大で50cmほど下がり、建物との間に段差が生じている。道路を挟んで海寄りに建つ平屋のセブンイレブンは、地盤の沈下に伴って傾いている。おそらく、平屋建ての店舗は杭基礎ではなく、ベタ基礎なのだろう。
さらに海寄りは逆に液状化が軽微
さらに海側に歩くと、風景は一変した。逆に、ほとんど液状化が生じていないのだ。
水道水の検査をしていた千葉県水道局の職員によれば、時期は分からないが海寄りの街区の造成は新しい。水道管は耐震管を採用していたので、被害はほとんどなかったという。
浦安市が公表している資料によれば、記者が歩いた護岸から海岸までの明海地区は78年に埋め立てが完了している。埋め立ての方法は通常、海を護岸で締め切ってから海水を抜き、陸側から順に埋め立てていく。つまり、海寄りほど造成は新しい。
被害状況を整理すると、最も液状化被害が大きいのは新しい埋め立て地の内陸側で、次に被害が大きいのは古い埋め立て地である駅周辺、最も被害が小さいのは新しい埋め立て地の海側だった。
単純に埋め立て時期の新旧で被害の大きさが比例しないのは、埋め立て土の材料や地盤改良の有無など工法の違いがあるのかもしれない。
(日経コンストラクション 渋谷和久)
[ケンプラッツ 2011年3月21日掲載]