低濃度汚染水、海へ放出 「高濃度」の移送先確保
福島第1原発、1万トン超
東京電力は4日、福島第1原子力発電所に保管してある「低レベル放射性物質」を含む大量の汚染水を海への放出し始めたと発表した。放射性物質濃度は国の排水基準の約100倍だが、タービン建屋地下などにたまり海に流れ出ている「高レベル」汚染水よりは低い。約1万1500トンを放出し、空いた場所を高レベル汚染水の回収に使う苦肉の策となる。
放射性物質で汚染された水を意図的に放出するのは国内初。東電は4日午後、災害発生の恐れがある際の緊急措置を定めた「原子炉等規制法64条1項」に基づき、放出を経済産業省原子力安全・保安院に報告した。
福島第1原発の廃棄物処理施設のタンク内廃液約1万トンと、冷温停止している5、6号機近くの約1500トンの地下水を海に出す。4日午後7時すぎに開始した。数日かけて放出する。
東電はタービン建屋地下などの高濃度の汚染水を除去するため敷地内のタンクの水を「玉突き」で別のタンクに移し、回収場所をつくっている。しかし容量が足りないため廃棄物処理施設のタンクの低レベル汚染水を海に出し、代わりに高濃度汚染水を回収。濃縮して乾燥し、固める処理ができる可能性もある。
同施設の汚染水中の放射性ヨウ素131の濃度は1立方センチメートル当たり0.87~6.3ベクレル。5、6号機近くの地下水は同1.6~20ベクレル。海に出ている高濃度汚染水に比べ10万分の1程度の濃度だ。
枝野幸男官房長官は4日の記者会見で、汚染水放出は「安全確保のためやむを得ない」と指摘。原子力安全委員会の代谷誠治委員も「低レベル汚染水を出す代わりに高いものが放出されないなら仕方ない」と述べた。
また国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長はウィーンで会見し、「日本政府と協力して海洋への影響を調査する」と語った。東電は周辺の魚や海藻を毎日食べても、受ける放射線量は自然界からの量よりも少ないと説明している。
2号機の取水口付近のピット(立て坑)からは高濃度の汚染水が出続けている。東電は4日夜、汚染水がトレンチ(坑道)の中ではなく坑道下の石の層を通ってピットに達している可能性があると明らかにした。
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