「初対面で好感度高めるには」営業の達人に聞く
ビジネスで初対面の相手に与える印象は重要だ。第一印象が良ければその後の仕事がスムーズに運びやすいが、悪い印象を持たれてしまうと、それを払拭するのに長い時間がかかるかもしれない。
プルデンシャル生命保険(東京都千代田区)のエグゼクティブ・ライフプランナー、米谷直樹さんは初対面では最低限、「感じのいい人」と思われるように心がけている。
服装は基本的にオーソドックス。「変わった襟の形をしたシャツ、変わった色のスーツを着た人を見かけるが、服装でアピールする必要はない」と話す。米谷さんが持っているスーツはベーシックな紺や濃いグレー。シャツの8割は白で、2割が薄いブルーだ。
その上で、相手の常識や価値観に合わせる。「一般的に、製造業の人は地味な人が多いので、相手に合わせてリクルートスーツのような格好でいい。サービス業の人は少し派手なので、ネクタイをちょっと華やかにしたりする」。ファッション業界の人に会うなら、良質な素材で清潔感があり、流行を取り入れた服装が好まれるだろう。
においにも気を配る。たばこは吸わない。汗のにおいがしないよう、替えのシャツを毎日持ち歩いて、必要に応じて着替える。お客様の家に上がる際は、靴下をもう1足用意しておき、履き替えてから上がる。香水などの良い香りであっても「においはプラスにはならない」と考える。
グルメ情報サイト「ぐるなび」の営業リーダーとして活躍し、現在は東京で営業マン向けセミナーなどを手掛けるクラ・モチベーション(静岡県熱海市)代表の倉持淳子さんは、「常に笑顔でいること」を心がけている。
そのために、普段から"訓練"を欠かさない。鏡の前を通るたびにニコッと笑って「私、かわいい!」と心の中で思うのだ。鏡はトイレ、エレベーター、駅の構内、自分のオフィスの机の上など至るところにある。顔の筋肉を使い、自分に自信をつけることで、自然と明るい笑顔になるという。少々人目が気になるが、やってみる価値はありそうだ。
話し方も印象を大きく左右する。「自分が内気で人見知りタイプだと思うなら、あえて声を大きく出した方がいい。それだけで印象が随分変わる」
話すスピードは、ゆっくりだと「穏やかな人」という印象を与えることができる。声のトーンは、低いと「頼りになる人」、高いと「明るい人」と思われやすい。自分の地声を考慮しながら、意識的に調整してみよう。
一方、話すときに何らかの癖がある人は少なくない。「ええっと」を連発したり、髪をむやみに触ったり……。しかし、無意識の行動なので、自分ではなかなか気づくことができない。癖を直すために、倉持さんは、自分が話している様子を一度、デジタルカメラなどで動画撮影し、実際に見てみることをすすめる。
「セミナーの参加者に癖を指摘しても自覚してくれないが、映像を見せると納得してくれる」。まさに百聞は一見にしかず。第三者の目で客観視することが大切だ。
最後に、話の内容。「自己紹介はありきたりな内容では相手の記憶に残らない。完璧すぎる経歴もあまり人に好かれない」と倉持さん。その一方、ギャップがあると、人は興味を持つ。
「私はこう見えて○○なんです」というように、意外性をアピールするといい。例えば、スポーツマンタイプの男性が「実は茶道にはまっていまして」などと言うとインパクトがある。
これまで人に話して意外に思われ、かつ好印象を与えたエピソードはないか振り返ってみよう。それを自己紹介に使うといいだろう。
(ライター 上田 真緒)
[日経プラスワン2011年2月5日付]