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「二兎」を追うソフトバンクのLTE戦略

高速化競争の勝者は

編集委員 松本敏明

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ソフトバンクモバイルは、「DC-HSDPA」方式と呼ぶ高速通信サービスを2011年2月にも始める。さらに13年ころにはNTTドコモと同じ次世代携帯電話システム「LTE(long term evolution)」の導入を視野に入れるが、実は、もう一つ「別の候補」にも布石を打っている。高速化競争でソフトバンクモバイルが描く通信業界の異端児らしい未来図とは。

「ドコモより速く、早く」

「最後にもう一つ、紹介したい話がございます」――。米アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が得意とするフレーズ「One more thing!」を意識したかのように、孫正義ソフトバンクモバイル社長は11月4日の新製品発表会の終盤、こう切り出して「ULTRA SPEED」と呼ぶ高速通信サービスを紹介した。

新サービスは主に1.5GHz帯周波数を使い、下り方向の最大速度は毎秒42メガビット。11年2月下旬以降に法人向けサービスを、同3月下旬以降に個人向けサービスを始める。孫社長は「11年6月には人口カバー率60%のエリアでサービスが受けられる。NTTドコモよりも速いサービスを早い地域展開で実現する」と強調。10年12月24日にNTTドコモが始めるLTEサービス「Xi(クロッシイ)」への対抗心をむき出しにした。

ソフトバンクモバイルが、LTEではなくDC-HSDPA方式による高速化を選んだ理由は二つ。一つは、総務省から高速データ通信用として割り当てられた1.5GHz帯の10MHz幅を使いLTE並みの速度を出せること、もう一つは既存の「W-CDMA」技術の延長線上にあるため導入コストを抑えられることだ。1.5GHz帯を使うことで「トラフィックが逼迫(ひっぱく)している2GHz帯の通信を迂回させる狙いもある」(ソフトバンクモバイル)。

LTE導入「13年ころでいいのでは」

では、DC-HSDPAの次はどうするのか。孫社長は将来のLTE導入について「積極的に考えているし、様々な実験もやっている。これからベストなタイミングで、ベストな入り方をする」と述べるにとどめ、サービスの導入時期などには言及しない。

ただ、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は「端末が出る13年ころでよいのではないか」と述べ、別の幹部も「データ通信端末以外の(端末で使える)チップセットがそろったタイミングで考える」と話す。海外を含めて安価な端末が出そろう状況を見ながら次世代に移行しようという戦略が浮かび上がる。

総務省ではLTEに使える新規周波数として700MHzと900MHz帯の割り当てを検討している。ソフトバンクモバイルはその獲得に強い意欲を見せ、孫社長は「我々が優先的にもらえると信じて疑わない」と強調する。700MHzと900MHz帯は伝搬性がよく、欧米の通信会社もLTEでこの周波数帯を使う。海外製端末を調達しやすく、メリットは大きい。

「もう一つのLTE」で保険

さらにソフトバンクはグループとして、「もう一つのLTE」にも保険をかける手を打っている。保険どころか、もう一つのLTEが急成長を遂げれば、「7年間かけてLTEを開発してきた」と自負するNTTドコモや他の日米欧の通信会社を出し抜いて、「勝ち馬」に乗れる可能性もある。

もう一つのLTEとは「TD-LTE」のこと。同じLTEでも、NTTドコモなどが採用する「FD-LTE」とは異なる技術方式を用いる。もっとも大きな違いは、FD-LTEがFDD(周波数分割複信)という技術を使って上り下り方向の通信を別の周波数帯に分けるのに対して、TD-LTEはTDD(時分割複信)という技術で同じ周波数帯を時間で区切って上り下りの通信に振り分ける点。TD-LTEは、上り下り用に2つの周波数帯を確保しなくてすむ利点がある半面、上り下りを時間で区切って切り替える細かな制御が必要になる。

FD-LTEは、NTTドコモのLTEサービス「Xi」だけでなく、すでにサービスを開始した米ベライゾン・ワイヤレスや北欧のテリアソネラなども採用している。他の欧米の通信会社が導入しようとしているのもFD-LTEだ。

一方、TDD系の無線技術は、中国が国策として積極的に開発を進めてきた。中国最大手の携帯電話会社で5億件以上の契約を抱える中国移動通信集団(チャイナモバイル)は第3世代(3G)携帯電話でTDD系の独自規格「TD-SCDMA」を採用したサービスを09年に正式に開始。さらに11年にもTD-LTEを開始するとされている。そしてソフトバンクモバイルはチャイナモバイルと携帯電話向けのソフト開発で提携するなど、かねて太いパイプを築いてきた。中国以外でもインドの一部、ロシアなど人口の多い国がTD-LTEの導入計画を打ち出している。

ウィルコムの技術を社員ごと引き継ぐ

そんななか、12月1日にある通信会社がひっそりとホームページを立ち上げた。会社の名前は「Wireless City Planning(WCP)」。従業員が約120人という同社の代表取締役を務めるのはソフトバンクの孫社長だ。

WCPは12月7日、PHS事業者の旧ウィルコムが07年に総務省から認定を受けた「2.5GHz帯周波数を使う特定基地局の開設計画」を、12月21日付で承継する認可を得た。ウィルコムが2.5GHz帯で一部提供している次世代PHSサービス「XGP」の事業を引き継ぎ、合わせて電柱などの資産やロケーション(基地局など)などの借り主の地位も承継する。WCPは11年4月までに資本金を215億円に増資して、旧ウィルコムが立てた計画に基づきXGPサービスを本格展開する予定だ。

XGPが通信業界でひそかに注目されるのは、TD-LTEと同じTDD方式の技術だから。ソフトバンクモバイルの松本副社長はこの承継が完了する半年近く前に、「XGPの次のバージョンは、TD-LTEにきわめて近いものになるだろう」と発言している。つまりXGPの先にTD-LTEを一本化させる将来像を描いているということだ。

グループの「第5の通信事業者」

ソフトバンクモバイルにとってのWCPは、KDDIと「WiMAX」サービスを提供するUQコミュニケーションズとの関係に似ている。第3世代携帯電話会社との資本関係は3分の1未満とするという規定に従い、ソフトバンクの議決権ベースの影響力は3分の1未満に抑えられたが、社長人事からも分かるように、ソフトバンクの意向を強く受けている。

 WCPの取締役には、現行PHS事業を引き継いだウィルコムの取締役を兼ね、グループのモバイル事業の技術部門を統括する宮川潤一ソフトバンクモバイル取締役CTO(最高技術責任者)が名を連ねる。ソフトバンクグループはウィルコムを「グループ第4の通信事業者」と呼んだが、宮川氏はWCPを「第5の通信事業者のつもり」と位置づけ、ソフトバンクグループのモバイル戦略の大きな「ピース」として扱っている。

WCPには、ウィルコムでXGP事業にかかわってきた社員を中心に80人が出向し、XGPサービスの運用に加えて、XGP技術の高度化を前提とした技術開発を進める。「開発部門を持たないソフトバンクモバイルにとって、TDD方式の技術にたけてPHSの時代から実際のサービス運用を手掛けてきたウィルコムの技術者は、のどから手が出るほどほしかった人材」と、ウィルコムとソフトバンクの双方に詳しい関係者は説明する。

現時点ではXGPやその後継技術の「XGP2」は、同じTDD方式とはいえTD-LTEとは別の規格。総務省の承認を受けなければ、ウィルコムから引き継いだ2.5GHz帯でTD-LTEのサービスを提供できるわけではない。

こうした課題はあるが、TDDでは国内有数の技術を持つウィルコムのチームを傘下に取り込んだソフトバンクは、海外でTD-LTEが花開くタイミングに向けて準備を進めることができる。「今はまだ見えないがTD-LTEが大化けするかもしれない。そのときソフトバンクが中国やインドなどアジアの大市場と同じTD-LTEを展開できれば、NTTドコモに一泡吹かせられる可能性もある」と業界に詳しい関係者は推測する。

ユーザー数が多ければ多いほど、端末や基地局のコストダウンを図れる。さらに海外の通信会社と国際ローミングで幅広く提携すれば、ローミング収入も期待できる。「今後も中国からの観光客が増加するなら、チャイナモバイルの携帯電話をローミングで使えるようにすることの効果は大きい」(通信機器メーカーの関係者)。

かつては「邪道」、いまは世界の主流だが・・・

今はDC-HSDPAで手早く高速化しつつ、LTEの最適な導入時期を探る。そのLTEでは二つの方式に目を配り、いざというときにどちらにも行ける状態を準備しておく。海外と共通化可能な周波数帯の獲得など課題はあるが、ソフトバンクには中国やインドの状況次第でTD-LTEを先行させる選択肢もある。

海外の通信業界に詳しい関係者はこう語る。「かつてはNTTドコモのように独自の研究開発部門を抱え技術開発を先導するのが通信会社の役割で、てんびんにいくつもかけるようなやり方は"邪道"だった。しかし、海外では後者のような通信会社がいまは当たり前になっている」――。

もちろんWCPを通じてXGP事業を引き継いだソフトバンクは、「12年度末までに1100億円強を投資し、2万局弱の基地局を設置し人口カバー率92%を達成する」という計画を全うする責務を負う。TDD方式にしても、普及するかどうかは海外頼みで、チャイナモバイルなどがもたつけば「絵に描いた餅」で終わる。こうしたやり方には「手を広げすぎ」との指摘もある。

ソフトバンクに詳しい関係者は「ソフトバンクは今日決めなくてもいいことはすぐに決めない。条件がそろったときには素早く意思決定をする」という。そうした意味で、ユーザーから見てソフトバンクモバイルが数年後にどの技術を採り入れているかは予測が付かない。もしかするとその落としどころは、孫社長自身にもまだ見えていないのかもしれない。

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