ドコモ回線でiPhone使う、SIMロック解除で
ジャーナリスト 石川 温
NTTドコモの携帯電話回線で米アップルのスマートフォン「iPhone4」や多機能端末「iPad」が使えるようになった。4月1日、ドコモがiPhoneなどでも使える小型のSIMカードを発売したためだ。安定した通話品質を売り物にしているドコモの回線でアップルのハード(機器)を使いこなしたいというニーズは高いとみられ、消費者の選択肢が広がることになりそうだ。
ドコモは1日、携帯電話を1つの通信会社でしか使えないようにする「SIMロック」の解除を実施。これに伴い、SIMロックを解除した海外製端末などでドコモの音声・データ通信回線が使える「ドコモminiUIMカード」の発行を始めた。昨年春、アップルがiPadを発表したとき、ドコモの山田隆持社長は「iPadが『SIMロックフリー(解除)』なら、対応カードを発行する」と宣言した。しかし第3世代携帯電話(3G)版iPadにはソフトバンクモバイルのカードしか使えないようにする「SIMロック」がかかっていたため、ドコモはカードの提供を見送った経緯がある。それから約1年。ようやくドコモのmicroSIMカードが日の目を見ることになった。
SIMロックフリーのiPhoneならつながる
早速、ドコモminiUIMカードを入手して、使い勝手を試してみた。
現在、一般に売られている端末ではiPhone4とiPadがmicroSIMカードを採用している。しかし、ソフトバンクモバイルが日本国内で販売している機種にはロックがかかっているため、他社回線を利用することができない。一方、海外で流通しているiPhoneなどはSIMロックフリーなので、他の通信事業者が発行するカードを利用することができる。
今回ドコモが発行したカードも、海外で売られているSIMロック解除のiPhone4やiPadに挿入して利用できる。
発売当日の1日朝、昨年香港で手に入れたiPhone4と、オーストラリアで購入したばかりのiPad2を持って、近所のドコモショップに向かった。
開店早々に「ドコモUIMカードが欲しいのですが」と店員に伝えると「カードの再発行ですね。紛失されたのですか」との返事。胸に「研修中」のバッジを着けているところをみると、この日から発行された新カードのことがよく分かっていない様子だった。次に案内されたカウンターで対応してくれた店員はカードの仕組みをよく理解しているもようだ。開店直後だったため、カードはカウンター近くになかったようだが、すぐにショップの裏から持ってきてくれた。
事前に見ておいたドコモのホームページには、他社の携帯電話機などをドコモのSIMカードで使う場合には「他社製品の携帯電話など」が必要で、さらにドコモと回線契約がある場合は「FOMAカードか、ドコモUIMカード」を店頭に持参するように書かれていた。しかし今回、手続きした際にはどちらも提示は求められなかった。この日から発行を始めたばかりの新商品だけに、ショップにも混乱があったのかもしれない。
音声通話込みのプランは1万円強
今回、2枚のカードを発行してもらった。1枚はiPhone4で使うため、元々スマートフォン用に契約していたSIMカードを新カードに交換して、「音声通話プラン+パケット定額制」を引き継ぐことにした。このカードをiPhone4に差して使うと、音声通話は同じ料金体系だが、パケット料金はスマートフォン向けプランの上限5985円では収まらない。パソコンなどの外部機器を接続したのと同じ料金体系の1万395円となり、毎月の出費はかなりの額になる。
当然ながら、iモードやSPモードのメールなどは使えない。また、SMS(ショートメッセージングサービス)は使えるが、MMS(マルチメディアメッセージングサービス)は非対応となるので注意が必要だ。
もう1枚はiPad2用。データ通信専用としてUSB端末内のSIMカードで使っていた契約を、新カードに切り替えた。既存の契約で新カードを発行してもらう場合、12カ月間につき1回だけは手数料が無料になる(2回目以降は3150円。新規契約時も3150円が必要)。
データ通信の料金プランは従来の契約をそのまま引き継いだ。利用したデータ量の多少にかかわらず定額となる「定額データプラン フラット バリュー」で2年間同一回線の継続利用を約束する「定額データ スタンダード割2」に契約すれば5460円が上限料金となる。
ただし、データ専用プランの新カードをiPad2に差しても、アンテナの強度バーは表示されなかった。音声通話がない場合にはこうした表示になっているようだ。それでも「圏外」と表示されない限りは通信できるため、使用上の問題は特にない。
新カードを差したあとは、iPhone4もiPad2も、設定メニューでドコモの接続先(アクセスポイント)の「mopera.net」を入力すれば、ネットにつなぐことができる。
データプランなら5000円台でテザリングも
実際にドコモの新カードを差して使うと、東京都新宿区の住宅街で平日の昼間に、毎秒2メガビット程度の速度でネットを楽しめる。なんといってもドコモの安定した、圏外の少ないネットワークでiPhone4やiPad2を使えるのは頼もしい。
ぜひお勧めしたいのが、ドコモの定額データプランで契約した新カードをSIMロックフリーのiPhone4で運用するという使い方だ。データプランなのでiPhone4で通話はできずiモード機能も使えないため、携帯電話を2台持ちしているユーザーに限る使い方になる。
だが、これならパケット料金を5000円台に収めつつ、iPhone4本体でのネット閲覧やメールチェックに加えて、ノートパソコンなどの機器と3G通信網を無線LANで中継する「テザリング接続」もできる。iPhone4を小型無線LANルーターのように活用することができるのだ。
普段はiPhone4でネットにつなぎ、外出先でノートパソコンを利用するときはiPhone4をモデム代わりにできる。海外では当たり前の使い方になりつつあるが、日本国内でソフトバンクモバイルが提供するiPhone4はテザリング機能を使えないようにしている。SIMロックフリーのiPhone4+ドコモのネットワークという組み合わせだからこそできる使い方と言える。
海外製端末をすべて使えるわけではない
ただし、ロックがかかっていないiPhone4やiPad2を調達するには、海外に出向いて購入するか、ネットオークションや輸入販売業者などから購入する必要がある。このあたりはややハードルが高い。
なお、ドコモの新カードを使えばすべての海外製SIMロックフリー端末でドコモ回線で使えるというわけではない。その端末が日本の電波法令で定める技術基準に適合している無線機であることを証明する「技術基準適合証明」を受けており、端末に「技適マーク」がついている必要がある(iPhone4とiPad2は設定メニュー内に表示される)。技適マークがない端末を国内で使うと電波法違反になるので、注意が必要だ。
月刊誌「日経Trendy」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226
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