「都会で買い占めないで」 被災地の医師、窮状を訴え
「東京で買い占めないで、被災地にもっと救援物資を」。東日本巨大地震で16日までに4500人超の死者と行方不明者が出ている宮城県の石巻市で救護活動をした大森赤十字病院(東京・大田)の持田泰行医師(48)は、窮状を訴えた。
持田医師ら7人の救護チームは地震翌日の12日午後、石巻市に到着。被災者からの訴えは治療のための薬より、「明日の昼で食料が尽きる」という切実な問題だった。食料が届き始めた14日まで、1日1食とコップ1杯の水でしのいだ。
石巻市一帯の救護の拠点は石巻赤十字病院。津波被害を免れたものの、周りの畑は押し寄せた海水がたまって水田のよう。玄関や廊下はヘリコプターで運ばれてくる重症患者や避難所から訪れる被災者であふれた。
災害医療では重症度と緊急性に応じ、黒、赤、黄、緑の識別札を付ける。だが軽傷で自力で歩ける緑の札を付けた人も不安から病院を離れたがらず、毛布にくるまり廊下にとどまる。持田医師は「避難所に帰って、とはとても言えない」と語る。
13日は避難所の小学校を回った。1階に津波の泥が残る東松島市の大曲小学校には約1千人が避難。給食用エレベーター前の約3畳のスペースを仮の診療所に仕立てた。薬が欲しいという声の一方、「不安で眠れない」などの相談も多かった。「話を聞くことで負担はぐっと軽くなる。そういうボランティアも必要と感じた」(持田医師)
持田医師は新潟県中越沖地震でも救護に駆けつけたが「今回は中越沖地震が30カ所くらいで起きているイメージ」という。救援物資やボランティアの不足が目に付く。
14日に東京に戻り、「スーパーやガソリンスタンドは行列だらけ。本当に必要なのは被災地なのに……」ともどかしさを感じる。今月下旬にも再び被災地に向かう予定。「何でもいいから車に積めるだけ積んで持ってきてくれ」と頼まれた。
長期化が予想される避難生活。今後は肺炎や風邪など内科系の病状が増えてくる。持田医師は「国民全体が被災地のために行動してほしい」と訴えている。