0歳児虐待、背景に胎児への無関心 医師会が妊婦対策
虐待によって亡くなる0歳児が増えており、中でも生後1カ月未満での死亡が目立っている。日本医師会は、母親が妊婦健診を受けないなど、妊娠中に胎児に関心を払わない"胎児への虐待"が背景の一つになっているとして、妊婦教育も含めた対策の検討を19日までに始めた。
今村定臣常任理事は「一般的に虐待は出生後に始まるが、妊娠中に芽生える虐待の兆候を発見したり、胎児の健康を損なう行為を虐待とみなしたりして、早めに対応すべきだ」と指摘している。
2008年度に、心中を除き、虐待が原因で死亡したと厚生労働省が確認した18歳未満は67人で、0歳児が39人(58%)を占めた。うち26人は生後1カ月未満で、その中でも生後1日以内に死亡した子どもが16人いた。
親への聞き取り調査などを通じた検証で、死亡につながった虐待行為は「身体的暴力」「放置」などだが、1日以内に死亡した子どもでは、75%は母親が妊婦健診を受けておらず、81%は母子健康手帳の発行を受けていないと判明。69%は望まない妊娠だった。
今村さんらは、妊娠中に胎児に関心を払わないことが、その後の虐待につながっている可能性が高いと分析。
また妊婦健診を受けず、産気づいてから初めて医療機関へ飛び込むと、死産したり、新生児の健康状態が悪く早期に死亡したりする恐れもあり、今村さんは「これを胎児への虐待ととらえると、虐待死の数はさらに増える」と指摘する。
医師会は対策として、性教育のあり方、妊婦健診についての広報活動、妊婦が小児科を訪れて育児の相談をする「ペリネイタルビジット」の普及などを検討。具体的な方法について話し合う初のシンポジウムを20日に都内で開く。
厚労省によると、0歳児の虐待死は05年は20人(全体の36%)、06年も20人(同33%)、07年1月から08年3月は37人(同47%)と増えている。〔共同〕