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モバゲー問題、南場社長が明かす「囲い込み」の真相

巨大SNS、火花散る争奪戦(後編)

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「私たちは、コンプライアンスに関してはしっかりした会社だと自負していたんですね。そういう会社が、まさか疑問を持たれる立場になるとは思っていなかった……」

12月8日、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いで、携帯電話向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)を立ち入り検査した。フランス出張中に起きた突然の出来事に、南場智子社長は驚きを隠さなかった。

留守にしていた数日間で、世間が会社を見る目は様変わりしていた。小雨で寒さ増す12月13日、帰国したばかりの南場社長は本社内の小さな会議室で取材に応じ、静かに、落ち着いた口調で、こう沈黙を破った。

「法令に違反する行為があったとは思っていません。公取委には、きちんと率直に事実を申し述べて考えを伝え、判断していただきたいと思っています。ただ、皆さんにご心配とご迷惑をおかけしたことを反省し、今後は、このような疑義がかからないような運営を徹底していきたい。そして、これを機に会社をもっとよくしていこうという決意を新たにしました」

「真の一流企業となる糧としていきたい」

12月15日には、DeNAがパートナーのソフト開発会社などを一堂に集め、今後の戦略を披露する一大イベントが控えていた。公取委の疑いは、まさにそのソフト開発会社に対して、競合するグリーのSNS「GREE」にゲームを提供しないよう不当な制限をしたというもの。イベントでは、ともに世界に打って出ようと、集まった各社を鼓舞しようとしていた。その矢先の、水を差すような事態。南場社長は悔しさをにじませながら、言葉をつないだ。

「我々は、ゲームやエンターテインメントという広い市場、あるいはグローバル市場では、まだまだ小さなプレーヤーで、弱小なんですね。これから、もっと強く立派な会社にならなければいけない。その意味で、今回はよい教訓をいただいたなと思います。真の一流企業となる糧としていきたい。これが本音です」

ソフト開発会社の証言を集めると、確かにDeNAは開発会社に「モバゲーかGREE、どちらにつくのか」と迫り、GREEにゲームを提供した開発会社に対しては、モバゲー内のゲームに新規ユーザーを運ぶ「導線」を遮断するという措置を講じていた(詳しくは前編「モバゲー、公取委立ち入りの深層」を参照)。

ただし、単純に「携帯ゲームをめぐる競争激化による囲い込み」と断じるには、疑問点が多い。「動機」とされるいくつかの説は、子細に見ていくと合理性を欠く。なぜ、GREEに与する開発会社を切り捨てるような施策を強行したのか。生き馬の目を抜くネット業界の最前線で、何があったのか。詰め寄ると、南場社長は説明を始めた。

「信頼できる会社にトラフィックを優先的に流したい」

「モバゲーはオープン化をして、多数の外部のパートナーさんが参加してくださるプラットフォームとなりました。プラットフォーマーとなった我々の本業は、モバゲーに集まってくるユーザーさんのトラフィックを、ゲームを提供してくださる各社に振り分けることなんですね。まず、それをご理解ください」

携帯電話向けのゲームサイトとして急成長を遂げた2大巨頭、モバゲーとGREEは、「オープン化」戦略で大小さまざまなコンテンツ事業者を巻き込み、ゲーム分野ではNTTドコモの「iモード」を食わんばかりの一大プラットフォームへと変貌しつつある。

iモードのメニューリストにどの会社のサイトを載せるのか、その順番はどうするのか。あるいは、iモードのトップページの限られたスペースに何を露出するのか。集まってきたユーザーを各社のサイトへいざなう導線部分の決定権や編集権は、NTTドコモにある。同じように、モバゲーでもそうした権限はDeNAが有する。

モバゲーに集まるアクセス件数は2010年7月時点で月間740億件と、同時点のヤフーの月間485億件を大きく上回る。8月以降、DeNAはアクセス件数を非開示としているが、現在は1000億件を超えると見られる。このうち、アクセスがもっとも集中するのはモバゲーのトップページ、あるいは「ゲーム」ジャンルのトップページ。新規のユーザーも、ほとんどがこれらのページを訪れる。

その膨大なトラフィックを、どう各社へと振り分けるのか。あまたあるゲームのうち、何を目立たせながら、どうサイトを活性化させていくかという舵(かじ)取りが、DeNAにとっての重要な業務となっている。南場社長はそう前置きしたうえで、説明を続けた。

「親密先を定めるプロセスを進めていた」

「モバゲーに参加してくださるパートナーさんは、おかげさまで約300社くらいまで増えました。これから、まだまだ成長しなければなりませんから、当然、戦略的にトラフィックを振り分ける必要がある。そのために、優先的にトラフィックを割り当てるパートナーさんを内部で選定していたんです」

「一方で、うちの内製ゲームはすごくよくできている。ノウハウがある。それを余すところなくパートナーさんに提供して育成したい、いいものを作る会社にはそれだけチャンスを提供していきたい、という思いがある。だから、本当に力があり、かつノウハウが流出するなどの心配がない信用のおける会社さんを親密先と定め、そういったところへのトラフィックを優先する、というプロセスを進めていたわけなんです」

内製ゲームだけの時代は社内事情によって適当にトラフィックを振り分けていたが、外部の会社が入り込んだ今、どう振り分けるかの判断は難しくなってきた。そこで、優遇するパートナーの選別に入った。条件は「ノウハウが流出するなどの心配がない信用のおける会社」。自ずと、グリーとの関係が、線引きとなった。

ソーシャルゲームの開発でしのぎを削ってきたグリーは、モバゲーから半年遅れでオープン化を実施し、プラットフォーマーとしても競合関係となった。優遇パートナーには、準備を進めていたスマートフォン向けの新プラットフォームの技術情報を先行して公開するなどの特典も与えたい。だからDeNAは、将来有望で、かつグリーに情報が漏れる心配のない親密先を探していた、という説明だ。

「グリーに与した弱小ベンチャーを狙って踏み絵を踏ませた」という論調が広がるが、取材を進めると、確かに信頼度を指標に選別していたと受け取れる傍証も浮かび上がった。

規約違反を繰り返していたソフト開発会社も

モバゲーで導線を切られたあるソフト開発会社は、グリーがプラットフォームを本格的にオープン化した10年8月から約3カ月の間に、モバゲーで提供していたソーシャルゲームと同一のタイトルを7つもGREEで提供していた。こうした開発会社にノウハウのすべてをつぎ込めるかというと、難しい。

一方で、この会社は、モバゲーのいくつかの規約に違反する行為を繰り返していた。DeNAの関係者によると、あるゲームで女性の胸が見えるアニメ画像が見つかったため、規約に準じ、改善を要請したという。「ゲームが公開される前の審査時には、そのような画像はなく、審査通過後に追加したのでは」。そう語る関係者は、話を続ける。

「ある大手ゲーム会社の伝統的な人気タイトルに、名前とロゴが酷似したゲームもあった。大手からの指摘を受け、改善要請をしている。また、モバゲーのコミュニケーション機能を使い、他社のゲームクリエイターを引き抜くような行為も発覚した。営業行為は規約違反のため、厳重注意をしています」

「弱小ベンチャーたたき」という指摘もあるが、必ずしもそうではない。モバゲーで導線を切られたソフト開発会社のうち少なくとも2社は数百万人規模のユーザーを抱えており、ソーシャルゲームの実績では、家庭用ゲーム機の世界でならした大手ゲームソフト会社の多くをしのぐ。神奈川県内のあるソフト開発会社の社長は「モバゲーで一定以上の売り上げ実績がある、比較的、有力な会社にのみ、モバゲーかGREEかどちらか選ぶよう連絡があったようだ」と話す。

「協力するなら優遇するのは当たり前の商慣習」

大手ゲーム会社による過去の人気タイトルのソーシャルゲーム版を取りそろえたGREEでも、「100万ユーザーの大台に乗ったソーシャルゲームのうち、大手によるものは約2割」(グリー広報)。グリーにとっては、むしろモバゲーで実績を積んだ中堅・中小が来てくれる方がありがたく、モバゲーからすれば行ってもらいたくはない、ということになる。

南場社長の主張と、いくつかの傍証を鑑みれば、今回、公取委から疑義をかけられたDeNAの行為は、「信頼できる優遇パートナーの選別」が起点となっていると言える。そうとらえ、モバゲーの優遇を取りにいった開発会社も少なくない。

「『GREEを選んだら切る』ということじゃなくて、『モバゲーに協力してくれるなら優遇します』ということ。エクスクルーシブ(独占的に)でやってくれたら、その分、特典を出しますよと。それはどこの業界だってそうじゃないですか。協力してくれるならインセンティブを出す、ダメなら出さないっていうのは、ごく当たり前の商慣習ですよ」

こう言い切るのは、「モバゲーかGREEか」の選択を迫られ、モバゲーを選んだと言う中堅のソフト開発会社、KLab(クラブ、東京・港)の真田哲弥社長だ。そして、こう証言する。「グリーさんだって、DeNAさんと同じことをしていますよ」――。

DeNA、グリー、双方と条件交渉

クラブは、人気邦楽の歌詞が見られる「うたまっぷ♪歌詞DX(うたパップ)」といった数多くの携帯電話向け公式サイトを運営するなど、モバイル分野のコンテンツ開発に強い。そのノウハウを生かし、ソーシャルゲームの開発に経営資源を集中させてきた。代表作は、類似ゲームの火付け役となった、キャバクラ嬢育成ゲームの「恋してキャバ嬢」だ。

恋してキャバ嬢は、キャバクラ嬢となって接客し、ナンバーワンを目指すソーシャルゲーム。ゲーム上の友達に応援してもらったり、ドレスや香水といったアイテムをプレゼントしてもらったりすると、ゲームを有利に運ぶことができる。09年12月、ミクシィが運営するSNS「mixi」のパソコン向けアプリとして提供したのを皮切りに、10年4月からは携帯電話向けとしてモバゲーで展開。合計のユーザー数は10年5月、150万人を突破し、6月末には2倍の300万人となった。

6月末からは、GREEのオープン化第1弾に合わせ、GREE版も投入。「人気ランキング」でトップ3を維持するなど、すぐにGREEの顔となった。この効果が上乗せされ、10年10月には全プラットフォームのユーザー数が500万人を突破する。ところがこの間に、DeNAから「今後は、どちらかを選んでください」と通告を受けていた。真田社長は語る。

「うちは今回、DeNAさんだけではなく、グリーさんとも条件交渉をして、『エクスクルーシブでもいいですよ、だったらその代わり条件を出してください。いい条件の方とやりますよ』と、最初から明確な態度で臨みました。それで、最終的に条件と将来性と諸々を考慮してDeNAさんを選択した。その旨は11月17日にグリーさんに伝えました」

すると11月18日、恋してキャバ嬢と、ランキングのトップ10を堅持していた「戦国バスター」の2タイトルへの導線を「切られた」のだという。

立ち入り検査の当日にランキングが突如、復活

2つのゲームはGREEの「オススメゲーム」などの目立つ場所はむろんのこと、人気ランキングからも忽然(こつぜん)と姿を消した。「モバゲーから閉め出された」とする開発会社と似たような現象。モバゲーのように、「カテゴリー」から消えることはなかったが、並び順は「ページを何回もめくったあとの最後尾に追いやられた」という。

「ランキングの導線に関しては、DeNAに立ち入り検査が入った12月8日に突如、復活して、おーわかりやすすぎる、と思いましたけれど(笑)」。こうした真田社長の証言をグリーに確認すると、おおむね認めたうえで、こうコメントした。

「DeNAさんの囲い込みのあと、迷っている開発会社さんには可能な限りの支援をしました。クラブさんに関しては、オススメなど優遇枠への露出に加えて、恋してキャバ嬢のテレビCMを当社持ちで放映し、出資提案もさせていただいていた。ところが『今後はGREEにゲームを出さない』とクラブさんから連絡があり、であれば積極的にGREEに出してくださる開発会社さんの支援を優先したいということで、クラブさんの優遇扱いをやめたということです」

ランキングに関しては「優遇パートナーの係数がランキング結果に反映されていたため、一般扱いになったと同時に、外れたと思われます。12月8日に復活したことについては、ランキングのアルゴリズムを随時、変更しており、その関係で浮上した。(公取委の動きとは関係がなく)まったくの偶然です」とする。クラブの真田社長にぶつけると、こう言った。

「そんなわけないじゃないですか。誰も信じませんよ、そんなの。圏外から18位とかに復活するならわかるけれど、圏外からいきなり4位とか5位ですよ。でも僕らは、導線を切られても仕方がないという前提でいた。競合になるから切るというのは、普通の商行為だと思っています」

「カテゴリーから抜いたのは、やり過ぎ」

競合との関係度合いに応じて優遇策に差を付ける、という意味では、グリーもDeNAと同じことをしていた。ただし、グリーは結果としてモバゲー側についた開発会社への優遇措置を外したのであり、数十社にどちらかを選べと迫ったDeNAの行為と同列に語ることはできない。しかも、並び順の最後尾に回したとはいえ、DeNAのようにカテゴリーからは落としていない。

今回、DeNAが講じた措置が、「優遇しない一般パートナーとして格下げした」ということなのであれば、なぜ、カテゴリーからもタイトル名を抜いたのか。この点は、クラブの真田社長もいぶかしむ。

「そもそもカテゴリーは、大してトラフィックがない。もっと言うとランキングも意味がないことが今回の一件でわかったんですよ。GREEでランキングが復活しても、ユーザー数はまったく増えなかった。それよりも、ユーザーを紹介してくれたときのプレゼントを増やすなど、導線に頼らない経営努力の方が、よっぽど利いた。GREEでのユーザー数と売り上げは、伸び続けていますから」

新規のユーザーやゲームを探すユーザーのほとんどは、ゲームのトップページに上から並ぶ「注目のゲーム」「イチオシゲーム」「オススメ新着ゲーム」といった枠から流れてくるという。そして、場合によってはユーザーによる紹介の方がはるかに高い効果をもたらす。

DeNAのソーシャルメディア事業本部長兼最高執行責任者(COO)を務める守安功取締役は、カテゴリーは新規ユーザーを運ぶ導線としてさほど意味がないことを認めたうえで、「だからあまり気にしていなかったというか、本当に知らなかった」とする。であればなおさら、カテゴリーから切ることで完全にモバゲーから閉め出す印象を与えるより、残しておけばよかったはずだ。

「誤解を受けることがあったのかもしれない」

もう1つ、DeNAに問題があるとすれば、開発会社に対する「伝え方」だろう。「協力関係を築いてくれるところを優遇したい」という動機が発端であったなら、そう素直に伝えればよかったはず。例えば、「プラチナパートナー」と「一般パートナー」に分けて条件を提示し、選んでもらうといった方法はなかったのだろうか。

「あっちに出したら切るだの、止めるだの、そんなことを言うから話がおかしくなるんですよ。そこは、DeNAさんも反省していただきたい。正直、奢(おご)りがあったのかなと思います」。クラブの真田社長は、こう苦言を呈する。今回、モバゲーの導線を切られたとする開発会社は、一様に「社名を絶対に特定されない」ことを条件に取材に応じた。それだけ、DeNAを恐れている。南場社長に突きつけると、率直にこう語った。

「我々にそういった態度があったのだったら、それは戒めていきたいと思います。パートナーさんあってのプラットフォーマー。プラットフォームだけでは何もできない。そのなかで親密先を定めるプロセスに、誤解を受けることがあったのかもしれません。確かに、プラチナパートナーになりますか、やめますか、ということだったんですよね。それが、こういうことになってしまった。現場のコミュニケーションの課題だと思います」

南場社長は動揺する社内に向かって、「違反の事実は認めていません。けれども、パートナーさんにすごく愛されているプラットフォームだったら、これはなかったことなんだよ」と戒めたという。カテゴリーなど、遮断した導線の一部は、元に戻した。そして、判断は公取委に委ねることとし、15日のイベントに臨んだ。

スマートフォンからも利用可能に

12月15日、東京・汐留のイベントホールで開いた年1回の開発者向けイベント「モバゲーオープンプラットフォームフォーラム」。南場社長は、立ち入り検査の件については冒頭で短く触れるにとどめ、集まった約1000人を前に、矢継ぎ早に新戦略を披露した。

スマートフォンに照準を絞るDeNAはこの日、アップルの「iPhone」とグーグルの携帯向けOS「Android(アンドロイド)」搭載端末のブラウザーからもモバゲーを利用できるサービスを開始。従来のモバゲーとIDを共有して、日記やコミュニティー機能はもちろん、DeNAが内製する「怪盗ロワイヤル」などのソーシャルゲームも楽しめるようにした。今後はパートナー各社のソーシャルゲームも順次、対応させていくとする。

モバゲーのパートナーが世界市場へと打って出るための、海外戦略も前進させた。10年11月にDeNAが4億300万ドル(約325億円)で買収したばかりの米ngmocoが、そのベースとなる。

ngmocoは北米を中心に、iPhone向けソーシャルゲームのアプリなどを展開している。ソーシャルゲームアプリの共通プラットフォームが抱えるユーザー数は、1750万人以上。この名称を「Mobage」と改名、世界統一ブランドとする。また、Mobageに対応したアプリをiPhoneとアンドロイド端末向けに容易に作ることができる開発環境を、国内のパートナーに順次、公開していくという。

サムスン製アンドロイド端末すべてにモバゲー

 イベント終了間際に再び登壇した南場社長は、もう1つ大きな発表をした。韓国のサムスン電子との提携だ。日本市場向けを除くサムスン製のアンドロイド端末すべてに、可能な限りモバゲーのアプリをプリインストールしていく。世界的にヒットしている「Galaxy S」だけでも10年の販売台数は世界で2500万台に達すると見られ、11年は2倍の5000万台を目標としている。人気端末を広告媒体とした世界へのプロモーションが、一気に加速する。

広がる世界への期待。熱気に包まれた懇親会の会場で、モバゲーに多くのアプリを提供するソフト開発会社の社長は、こう話した。「日本を代表する企業になるなら、僕らの代表として世界に出るなら、もっとしっかりしろよ、と言いたい。国内の狭い争いでつまずいている場合じゃないでしょうと」

「クロスボーダー、クロスデバイス」を旗印にさらなる飛躍を目指すDeNA。ヤフーと共同で運営するパソコン向けの「Yahoo!モバゲー」とngmocoを合わせれば、すでに400社以上のパートナーによる1000以上のゲームを抱える一大プラットフォームとなった。オープン化から、わずか1年足らず。「日本発世界標準」を本気で獲りにいくその過程で、DeNAは足下のほころびを見逃してしまったのかもしれない。

プラットフォームは、成長、成熟とともに、公平性が問われるようになる。iモードの初期にも、「公式サイトの認定プロセスが不透明」「審査期間が長すぎる」といった不平不満がコンテンツ事業者から巻き起こったことがあった。アップルが運営するiPhone向けアプリのプラットフォームもしかり。そういった先達に並ぶには、住民たるパートナーをまとめる統治能力と、いっそうの法令順守の姿勢が要求される。そして、競合他社とうまく渡り合う能力も試される。

終わらない争奪戦

グリーもスマートフォンと世界展開を最優先の戦略に据え、動きを速めている。12月6日には、パートナーがiPhoneとアンドロイド端末向けのアプリを容易に作ることができる開発環境を公開。DeNAに匹敵するような海外での買収や提携はいまだないが、田中社長は虎視眈々(たんたん)と時機をうかがう。ゴールは南場社長と同じだ。

両社の海外展開の進ちょくに歩を合わせるように、パートナー側の動きも慌ただしくなってきた。公開後、2カ月弱で100万人以上のユーザーを集めたGREEの人気ゲーム「おみせやさん」は、芸者東京エンターテインメント(東京・文京)というベンチャーが提供している。同社はGREEと良好なパートナーの代表格として紹介される機会が多かった。そのトップ、田中泰生CEOは、モバゲーのイベントに訪れ、人けが少なくなった最後の場面で、南場社長に声をかけ、こう言葉を交わした。

「来年頭に、モバゲーに出します。世界に出るべく、ほんとに今、準備していますので。ついて行きます」「ぜひ。一緒に、行きましょう。ありがとうございます!」

南場社長が望もうが望むまいが、意識しようがしなかろうが、グリーとのつばぜり合いや衝突、攻防戦は、当分、終わりそうにもない。

(電子報道部 井上理)

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