風力や地熱も… 「全量買い取り制」、設計難しく
政府は2012年度をメドに大規模な太陽光発電や風力、地熱、中小水力、バイオマス(生物資源)発電の電気も幅広く買い取る再生可能エネルギーの「全量買い取り制度」を導入する方針だ。負担度合いは家庭や企業によってまちまちとなり、難しい制度設計を迫られる。
経済産業省の試算では同制度開始後10年目には再生可能エネルギーの導入量(発電能力ベース)が09年の3倍強の4700万~5000万キロワット規模に拡大する。電力会社の買い取り量が増加、電気料金への上乗せ負担額は現行の太陽光発電の余剰電力買い取り制度だけの場合に比べ1.5~2倍になるとみられる。
電気エネルギーで鉄スクラップを溶かして鋼材を製造する電炉業界は、全量買い取り制度が導入されれば負担増分で経常利益の1割以上が失われるとみている。空調に大量に電気を消費するデータセンター運営会社も「省電力型サーバー導入などを一段と進める必要が出てくる」と懸念する。
一方、太陽光発電パネルなどを生産している電機大手は「工場の電力コスト増より(パネルなどの)売り上げ拡大効果の方が大きい」とみており、全量買い取り制度の産業界への影響は業種間で明暗が分かれそうだ。
再生可能エネルギー導入で先行する欧州も買い取りコスト問題に頭を悩ませている。ドイツでは太陽光発電の全量買い取り制度で09年に1キロワット時0.32ユーロ(当時約41円)だった買い取り価格を段階的に引き下げ、今年は0.21ユーロ(約23円)以下にする方針だ。
スペインは08年に買い取り価格を割高に設定。買い取りの申し込みが殺到し「太陽光バブル」の様相を呈した。同年の太陽光発電の導入量は275万キロワット。09年に買い取り条件を厳しくすると導入量が6万キロワットに激減、混乱を招いた。