世界株安再び 原油高でリスク回避強まる
中東・北アフリカ地域の混迷が世界の金融市場を再び揺さぶり始めた。2日の東京株式市場で日経平均株価は4営業日ぶりに急反落し、前日比261円(2.4%)安の1万0492円と、2月24日以来約1週間ぶりの水準に下げた。供給不安から原油価格が再び騰勢を強め、世界景気の先行きに対する楽観ムードが後退。世界の投資家はリスク回避に傾き、金や債券などの「安全資産」にマネーが流れ込んだ。
2日の東京株式相場はじり安となり、日経平均は心理的節目の1万0500円を割ってこの日の安値で引けた。株価指数先物への断続的な大口売りが相場を押し下げ、トヨタやソニー、信越化といった主力の輸出関連株は軒並み軟調だった。東証1部の93%の銘柄が値下がりし、韓国や上海などアジアの主要株式相場も全面安となった。
投資家のリスク回避姿勢を如実に物語るのが、原油高が収益増に貢献する大手商社や鉱業株の下げだろう。三菱商は1バレルあたり1ドルの上昇が2011年3月期の連結純利益を10億円押し上げるが、株価は原油高の環境でもじり安で推移し、国際石開帝石も売られた。ニューヨーク金先物価格が前日の時間外取引で最高値を更新したにもかかわらず、「産金株」と位置付けられる住友鉱は反落。商品高を手掛かりとしたマネーは株を避け、原油や金などの上場投資信託(ETF)に向かった。
市場参加者が改めて慎重姿勢に傾いたのは、中東・北アフリカの政情不安から原油価格が一段と火を噴くシナリオが無視できなくなったためだ。1日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近4月物は、日本時間2日午前の時間外取引で1バレル100ドル台に上昇した。リビアでは政府側と反体制派の抗争が激化して収束の兆しが見えず、イランやオマーンなど中東の主要産油国でも改革派のデモが相次いでいる。
株式相場も前日から欧州→米州→アジアと連鎖して下げている。みずほ証券の倉持靖彦氏は「今後の情勢を極めて見通しづらく、混乱が長期化する可能性に警戒感が広がった」と話す。今晩の米ニューヨーク株式相場が続落となれば、下値不安が一段と拡大する可能性がある。
バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は1日の上院銀行委員会で「今年の景気回復は昨年より幾分早いペース」との見方を示した。米サプライマネジメント協会(ISM)が同日発表した2月の製造業景況感指数は6年9カ月ぶりの水準に改善。ただ「原油高は世界景気にじわじわと悪影響を及ぼすとみられ、慌てて株式投資を急ぐ必要はないとの見方が広がってきた」(ちばぎんアセットマネジメントの安藤富士男氏)。世界景気回復への期待は崩れていないが、上値のメドが見えない原油高が総楽観ムードに修正を迫りつつある。
世界の主要株価指数について、前日と2日(欧米・中東市場は1日、取引時間中のアジア市場は日本時間15時時点)の騰落率を一覧。
〔日経QUICKニュース 篠崎健太、佐藤ちあき〕