シリア内閣総辞職、民主化要求に配慮 近く改革案発表
【カイロ=加賀谷和樹】シリアで29日、内閣が総辞職した。アサド大統領がオタリ首相からの総辞職の申し出を受理した。シリア国営通信が報じた。反体制デモへの対応を誤り、多数の死傷者を出した責任を負った格好だ。大統領は辞任したオタリ氏を新内閣発足までの暫定首相に任命、30日にも非常事態法の廃止を含む改革案を発表する見通し。民主化要求に配慮することでデモの終息を目指す。
改革案の詳細は明かでないが、大統領を支える与党バース党による事実上の一党支配を許す憲法条項を修正、野党を認める可能性がある。非常事態法は1963年に導入され、市民に対する令状なしでの逮捕、裁判なしでの投獄を認めてきた。報道の自由を容認するとの観測も浮上している。
29日には首都ダマスカスで大統領を支持する親政権派の数千人がデモを実施した。多くは与党関係者とみられるが、大統領側は支持勢力の大きさを見せつけ、反体制側の勢いをそぐ狙いだ。
シリア政府は29日、南部ダルアーなどこれまでに大きな反体制デモが起きた地域を中心に治安要員を配置、厳戒態勢を続けた。同日の親政権派のデモはダマスカス以外の都市でも計画されているとの情報がある。拡大すれば、反体制派と衝突する事態もあり得る。
28日には、隣国レバノンの首都ベイルートにあるシリア大使館の前で約300人のシリア人が親政権デモを実施。デモ隊は「リビアのようになってはいけない」と叫び、シリア国民が親政権と反体制に分裂して争う事態を避けるよう訴えた。
シリアのシャラ副大統領は28日、レバノンの親シリアのテレビ局に対し、アサド大統領が2日以内に「シリア国民を喜ばせる」重要な決定を公表すると述べていた。