ネット企業、日本勢の利益率突出 50%超も
「携帯」「すみ分け」がカギ
原材料が不要で労働力も少なくて済むインターネットサービス企業。そもそも利益率は高いが、日本勢は海外勢に比べても高い。交流サイト(SNS)のグリーや日本のヤフーは売上高営業利益率が50%を超える。日本勢の収益力の源泉はどこにあるのか。
売上高の半分以上が営業利益、自己資本利益率(ROE)は8割という高収益企業グリー。米フェイスブックや中国ネット大手、騰訊控股(テンセント)の「QQ」など世界の交流サイトとの決定的な違いは携帯電話が主戦場になった点だ。ゲームを主軸に利用者を集め、外出先などでの暇つぶしにネット上の見知らぬ会員とゲームを楽しむという、世界的にはまれな交流サイトになった。
同業のディー・エヌ・エーも売上高営業利益率は4割超。対戦の勝敗率など「ゲームを飽きさせないために細かい数字の分析を徹底」(南場智子社長)している。ゲームで使う武器や衣装など「アイテム」は会員が購入した分がほぼそのまま利益になる。
日本の交流サイト運営会社がいち早く高収益企業になった背景には、携帯電話インフラの発達がある。データ通信の定額料金プランが浸透。通信会社を通じた決済によりサービスの利用料も確実に集金できる。ネット企業がNTTドコモなど携帯事業者に支払う手数料はスマートフォン(高機能携帯電話)のソフト販売時に米アップルに支払う手数料より割安だ。
サイトが分野ごとに「すみ分け」している点も日本勢の特徴だ。米国ではグーグルやマイクロソフトなど総合IT(情報技術)企業が乱立。新規参入も激しく、広告収入の取り合いになる。
一方、日本ではネット広告が集中するヤフーはむしろ例外で、「専門店」が幅を利かせる。ネット通販の価格比較を10年以上続けるカカクコムの田中実社長は「日本の通販市場はプレーヤーが多く、大手家電量販店から秋葉原の中小問屋までがひしめく複雑な市場」と分析する。
このため楽天やカカクコム、ぐるなびなど各分野で強みを持つ情報の「整理役」の企業が成長。それぞれのニーズに合った広告主からの広告収入を安定して集め、高い利益率を維持する。
もっとも、世界的に高い収益力を持ちながらPER(株価収益率)は海外勢と比べ低水準だ。日本のヤフーやディーエヌエは10倍台で、米グーグルの25倍を下回る。人口減少の日本で「国内限定のビジネスを展開しても中長期的には需要の拡大が期待できない」(いちよし経済研究所の納博司・主席研究員)ためだ。
こうした状況を打破するため、日本勢も海外進出に乗り出している。楽天やディーエヌエは海外ネット企業を買収。ぐるなびや医療情報のエムスリーは2011年3月期に海外事業が黒字化する見通しだ。日本の高収益サービスは世界でも通用するのか。各社の海外戦略に一段と注目が集まりそうだ。(甲原潤之介)