東京と沖縄の差4000万円 社会保障の生涯純負担
内閣府は14日、生涯を通じた税金や社会保険料の負担が社会保障の受益をどれだけ上回るかを示す「生涯純負担(1人当たり)」について、都道府県別の分析結果を初めてまとめた。純負担が最も大きい東京都と最少の沖縄県の差は約4000万円に達した。税負担には法人税も含んでいて、その分大きくなっているものの、社会保障を通じて、所得が比較的多い地域から少ない地域への再配分がなされている実態を示す。
内閣府の経済社会総合研究所が秋田大の島沢諭准教授らと「世代会計」という手法を使って試算した。負担は税金や社会保険料、受益は年金や医療・介護などの社会保障費の合計で、差額の純負担額を計算した。今の社会保障制度や税制が続くことを前提に、2008年時点で0歳だった世代を試算の対象とした。
都道府県別の生涯純負担額の平均値は2139万円。これに対して、最も大きかったのは東京都の4415万円。愛知県や大阪府などの大都市圏が3000万円台で続いており、大都市圏の高さが目立った。大都市圏は1人当たりの県民所得が比較的多いため、所得を反映する税金や社会保険料の負担が大きいことが要因だ。東京都は生涯の負担が約9700万円に達する一方、受益は約5300万円だった。
純負担が最も少ないのは沖縄県の248万円。鳥取県や愛媛県なども含め1000万円を下回った例は7県あった。こうした県では、受益の水準が負担に見合う可能性が高いともいえる。
地域間の格差を生涯の所得に占める純負担の割合(生涯純負担率)で見ると、東京都が19%だったのに対し、沖縄県は2%にとどまった。内閣府の経済社会総合研究所は「所得の高い地域の負担が他の地域に回る再配分機能が働いている」と分析している。
税や社会保障を通じた再配分は公共投資よりも大きい。内閣府は世代会計の手法で公共投資で積み上げられた社会資本からの受益も都道府県別に試算。最も大きかったのは島根県の1466万円。最も小さい埼玉県(410万円)との差は1000万円程度だった。
これまで公共投資が地域間の再配分機能を担ってきたが、公共事業の削減が進んだこともあり、社会保障の役割が増した形だ。「都市部に負担が偏る傾向は今後も続く可能性もある」(秋田大の島沢准教授)と指摘される。格差拡大の懸念もあり、地域間のバランスをどうとるかが課題になりそうだ。