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慈善試合で示した日本サッカー界からのメッセージ

サッカージャーナリスト 大住良之

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東日本大震災の復興支援を目的とするサッカーのチャリティーマッチ、日本代表-Jリーグ選抜(TEAM AS ONE)が3月29日、大阪・長居陸上競技場で行われた。スタジアムは4万613人の観客で満員となり、入場することのできなかったファン3673人が隣接する金鳥スタジアムでパブリックビューイングを楽しんだ。

試合は前半に日本代表がMF遠藤保仁(G大阪)とFW岡崎慎司(シュツットガルト)のゴールで2点をリードしたが、Jリーグ選抜も後半37分にFW三浦知良(カズ=横浜FC)が1点を返し、日本代表の2-1の勝利で終わった。

3月26日の日本代表公開練習から行われてきた募金活動は、この試合の前半の時点までで2000万円を突破、試合で被災地を含めた日本中の人びとを楽しませただけでなく、復興のための義援金が被災地に贈られることになる。

「一丸となって何かをすること」

「この試合の目的は、試合内容や結果ではなく、みんなで集まって一丸となって何かをすること」

日本代表を率いるアルベルト・ザッケローニ監督はそう語った。

日本サッカー協会とJリーグが共同で開催し、ヨーロッパで活躍する選手を含めた日本代表のフルメンバーとJリーグの主要プレーヤーが一堂に会して対戦する試合は、その言葉どおり、日本のサッカー界が震災後初めて日本と世界に向けて発する重要なメッセージである。

この試合は、アジア各国、そしてヨーロッパ全土に生中継された。世界の人びとは、昨年のワールドカップ以後急成長を続ける日本のサッカーがその力を失っていないことを再確認しただろう。そして同時に、被災地で苦しむ人びとも、きっと何らかのメッセージを受け取ったに違いない。

最後までゆるみのない試合

この慈善試合で素晴らしかったことは、何よりも真剣そのもののサッカーを見せたことだ。

日本代表は24人、Jリーグ選抜は20人の選手を使い、大量の選手交代で試合の緊張感を保つのは難しかったに違いない。にもかかわらず、最後までゆるみのない試合だった。

当然、ファウルもあった。イエローカードも2枚出された。しかし、じつにフェアな試合だった。主審の判定に異議を唱える姿はほとんど見なかった。交代が多くても試合がゆるまなかったのは、そのフェアな態度のおかげでもある。

3人の審判も好試合の要因に

主審は西村雄一氏。副審は相樂亨氏と鄭解相(チョン・ヘサン=韓国)氏。昨年のワールドカップで高い評価を受け、準々決勝まで4試合を担当したトリオである。

今回の試合で西村氏が主審をすることが決まったとき、鄭氏が「ぜひ自分にも力にならせてほしい」と申し出てくれたという。3人の息の合ったハイレベルなレフェリングもまた、質の高い試合になった要因のひとつだった。

新戦術「3-4-3」に挑戦したザック監督

日本代表のザッケローニ監督は「試合は二の次」と言いながら、この試合で大胆な新戦術のチャレンジをした。

これまでザッケローニ監督は日本代表では一貫して「4-2-3-1」システムを採用してきた。だが、この試合で使ったのは「3-4-3」だった。

GKは川島永嗣(リールセ)、DFは右から吉田麻也(VVVフェンロ)、今野泰幸(FC東京)、伊野波雅彦(鹿島)、MFは右から内田篤人(シャルケ)、長谷部誠(ウォルフスブルク)、遠藤、長友佑都(インテル・ミラノ)、そしてFWは右から本田圭佑(CSKAモスクワ)、前田遼一(磐田)、岡崎。

ハーフタイムに8人もの選手交代をしたため前半の45分間だけだったが、日本代表の攻撃はこれまでにない迫力があった。アジアカップ優勝の自信、ヨーロッパでプレーしている選手たちの急成長(とくに長友と岡崎)もあるが、1つの要因として3-4-3という新システムが早くも機能しているように見えた。

「守備はコンパクトに、攻撃はサイドで2対1をつくる」

これがザッケローニ監督の3-4-3の狙いのように感じられた。

見事だった多様な突破の形

守備はボールを奪われたところから果敢にプレスをかけるが、それが効かないときには10人のフィールドプレーヤー全員でコンパクトな組織をつくる。DF3人、FW3人、そしてMFの両アウトサイドの計8人で「サークル」をつくり、その中央に2人の「ボランチ」が並ぶ形だ。

そしてボールを奪うと、サイドでFWとMFがコンビネーションを使って崩し、チャンスをつくる。右の内田、左の長友は、4バック時より「スタート位置」が高いため、より効果的に攻撃にからむことができる。

左サイドの長友と岡崎でつくるスピード、そして右サイドの内田と本田でつくる多様な突破の形は、本当に見事だった。

戦術使い分けにめど

「まだ調整が必要だが、難しい戦術をこれほど早く理解し、実践したのに驚いている」とザッケローニ監督。

これまでの4-2-3-1と、より攻撃的な3-4-3を、状況によって使い分けられるめどが立ったのは、わずか4日間の活動だったが、大きな収穫だった。

ただ、ハーフタイムに8人もの選手交代をしてメンバーががらりと変わると、後半の日本代表はまったくまとまりのないものとなってしまった。

「後半のメンバーは長くいっしょにやっているわけではないので、戦術の理解度が少し足りなかった」とザッケローニ監督はかばったが、前半途中で川島に代わってゴールに立ったGK西川周作(広島)とDF今野、伊野波を除き、MFとFWがそっくり変わった後半の選手たちは、能力面で日本代表として厳しいのではないかと思われた。

唯一、アジアカップには招集されなかったMF阿部勇樹(レスター)が攻守にハイレベルなプレーを見せていたが、他はほとんど見るべきものがなかった。

選手層の薄さ、主力が1人でも欠けることで戦力が大きく落ち込んでしまうのは、ことし9月にスタートするワールドカップ予選に向けて気になることのひとつだ。

終盤に訪れた「見せ場」

日本代表がすっかりおとなしくなってしまった後半、Jリーグ選抜も攻め込んだもののなかなか決定的な形がつくれないまま時間が過ぎていった。

だが、試合の終盤、思いがけない見せ場が待っていた。後半17分、Jリーグ選抜のドラガン・ストイコビッチ監督が一挙に5人もの選手交代を行った。ピッチに送り込まれたのはDF小宮山尊信(川崎)、MF関口訓充(仙台)、FWハーフナー・マイク(甲府)、FW平井将生(G大阪)、そしてFWカズだった。

クライマックスは彼らが入って20分後の後半37分に訪れた。Jリーグ選抜のGK川口能活(磐田)が自陣から大きく最前線に送る。落下点にいたのはDF闘莉王(名古屋)。やや左から中央にヘディングで流したボールを、背番号11、カズが狙っていた。

「みんなの思いが集まって取れたゴール」

送られたボールに向かって走るカズ。日本代表のDF森脇良太(広島)が追うが、カズは44歳とは思えない加速を見せる。そしてボールに追いつきざま、飛び出してきた日本代表GK東口順昭(新潟)の左横を抜いて、右足インサイドでゴール右上隅に送り込んだのだ。

ボールがゴールネットに突き刺さった瞬間、4万人余りの観客が総立ちとなった。ゴール裏に走るカズ、そしてカズダンス……。

誰もが「こうなってほしい」と思っていたことを、カズはこの上ない形で実現して見せた。

「私は相手に点を取られるのは大嫌いだが、長いキャリアのなかで、ゴールを決められてうれしかったのはきょうが初めてのこと」

日本代表のザッケローニ監督まで喜ばせた。

そしてカズは、「みんなの思いが集まって取れたゴール」と語った。これこそが、この試合のテーマだった。

日本中のサッカーファンが注目した試合だった。被災地でも、多くの人が苦しみをひととき忘れ、日本代表の攻撃のスピードに目を見張り、カズのゴールに歓声を上げたことだろう。

「復興」という名のゴールをみんなの力で

目を見張るプレーは、そして心を打つゴールは、みんなが心を一つにして、力を結集させた結果生まれるものだ。

「この試合で終わりじゃない。始まりなんだ」

試合後、ある選手がそう話した。これから、復興という大きな大きな戦いに挑むことになる。1人ではできない。数人でも無理だ。ありとあらゆる人が、みんなで心と力を合わせていかなければならない。

何年か後、「復興」という大きなゴールをみんなの力で勝ち取ったとき、2011年3月29日に大阪の長居陸上競技場で行われた「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!」という長いタイトルの試合のことを思い出す人がきっといる。そんな試合だった。

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