もんじゅ再開大幅遅れ 落下の装置、回収が難航
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の発電実験が大幅に遅れる見通しだ。日本原子力研究開発機構は9日、原子炉内に落下した燃料棒交換用装置を通常の方法では回収できないと発表した。来年5月にも予定していた発電実験は12年にずれ込む可能性もある。福井県はトラブルを重視、原子力機構に安全策の徹底を求めている。
原子力機構は同日、経済産業省の原子力安全・保安院に「通常の運転ができる状況ではない」と報告した。保安院は「研究開発の中止にはならないが、解決策をよく詰めてほしい」としている。
問題の装置は「中継装置」と呼ばれ、重さは約3トン。発電実験に必要な新しい燃料棒を入れ終えて、引き抜く途中で落ちた。装置をつかむ部分のネジがゆるみ、うまく働かなかった。
修理して再度引き上げる試みも失敗した。装置が落下した際に無理な力が加わり、一部が変形して引っかかったのが原因とみられる。
原子力機構は本来、引き上げる部分だけでなく周辺部も含めて取り出す方法を検討中。7トン近い重さになり、新たな機器や大がかりな作業が必要だ。「技術的には難しくない。来年度中には発電実験に進みたい」としているが遅れは必至。もんじゅの維持管理費は1日約5千万円とみられコスト増につながる。
放射能漏れなどの心配はないが、福井県の西川一誠知事は原子力機構の対応を「仕事に緊張感がない」と厳しく批判している。「もんじゅ」は今年5月、1995年12月のナトリウム漏れ事故以来14年半ぶりに運転を再開。出力40%での発電実験を計画していた。