国の経理「1兆7904億円が不適切」 09年度、前年の7.5倍
鉄建機構の余剰金が押し上げ 会計検査院
会計検査院は5日、国の2009年度の決算検査報告書を菅直人首相に提出した。経理処理が不適切などと指摘したのは986件で、総額約1兆7904億円。指摘総額は前年度比7.5倍に増え、過去最高を大幅に更新した。
適正規模を超えた余剰金や使われていない土地などの資産に対する指摘額が多かった。特に独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に約1兆2000億円の余剰金があることを指摘、国土交通省に返納を求めたことが全体を大きく押し上げた。
整理回収機構の回収業務で生じた利益約1837億円の納付を求めたほか、畜産関連の11公益法人の基金でも約404億円の余剰金を指摘。利用が低調な中小企業基盤整備機構の基金約461億円の規模の見直しも求めた。
国立大学法人が保有する宿舎用地(約100億円)や陸上自衛隊駐屯地の自動車教習所跡地(約45億円)などの国有財産を長年放置しているケースも問題視。「霞が関埋蔵金」に注目が集まる中、巨額の余剰資産の有効活用を促した形だ。
政府の事業仕分けの対象となった特別会計にもメスを入れ、厚生労働、農林水産、国土交通の各省が所管する7特会12勘定で、08年度に一般会計から約1623億円が過大に繰り入れられていると指摘した。
税金を納めすぎた法人が国税当局から還付を受ける際に適用する法律次第で還付加算金に差が生じることや、財務基盤の強い中小企業が資本金1億円以下という理由で減税措置を受けるのは法の趣旨に合わないなどと、税制の問題点も指摘した。
今回の検査は、中央省庁や政府出資法人の出先機関を含めた約3万3千カ所のうち約3300カ所を実地検査。自治体など約4300団体も調べた。税金の無駄遣いなど支出面で1兆6054億円、税金の徴収漏れなど収入面で1849億円を指摘した。
省庁別の指摘額は、鉄建機構を所管する国交省が最多の約1兆2100億円、次いで金融庁の約1837億円、厚労省の約1330億円が続いた。昨年度に不当事項として取り上げた593件のその後の状況を調べた結果、546件で改善措置が取られていた。