就職内定率最悪、焦る学生 厳しい企業の目
リクルートスーツに北風が吹き付ける――。16日発表された来春卒業予定の大学生の10月時点の就職内定率は、「厳寒」といわれた昨年をさらに下回る過去最低の水準となった。就職活動を続ける学生は焦りを募らせ、大学の就職担当者はため息をつく。採用を絞っている企業側からは「意欲が感じられない」「個性がない」と学生への不満も漏れてくる。
「80社回ってようやく内定を得た友人もいる。努力が足りなかったかな……」。早稲田大文系4年の女子学生(21)は反省交じりに晩秋の就職活動に臨んでいる。1月に就活を始め、出版社など約20社を回ったが内定ゼロ。4月に大手企業の内定を得たゼミ仲間もいたが、自分は出身地の公務員試験も失敗した。卒論作成の合間を縫って、企業を回る日々が続く。
「厳しいとは思っていたが、まさかここまで落ち込むとは」。明治大就職キャリア支援部の担当者はため息をつく。昨年と同程度の厳しさは覚悟をしていたが、今回発表された内定率は予想を覆す数字だった。
就職相談の窓口には「何社回っても就職が決まらない」と焦りの声が寄せられており、担当者は「企業がリーマン・ショックから立ち直りつつあるという話も聞くのだが」と気をもむ。
大阪市中央区内のホールでは16日、大学4年生を対象にした合同就職説明会があった。大阪産業大文系4年の男子学生(22)は「就職戦線が厳しいと聞いていたので」と、3年生の春から会社説明会に参加。希望のドラッグストア業界を中心に約50社を受けたが内定はゼロだ。主催者の就職情報大手、学情(大阪市)によると、今回の説明会には約2200人が参加。10月開催だった昨年より時期は遅いのに、参加者は約500人増えた。
上智大キャリアセンターの担当者は「まだ10月段階の数字。今後回復する可能性もある」と冷静な反応。「企業からの求人自体はそこまで減っていない。企業と学生の間にミスマッチもあるのではないか」と分析していた。
「面接で志望動機を聞くと『安定した会社に入りたい』という学生が増えた」と、東京都内の大手システム会社の採用担当者は不満顔だ。「意欲がないだけではないか」
採用は2年前の半分に絞り込んでおり「優秀な学生は他社との争奪戦」と担当者。内定辞退者が出ても補充で採用したい学生はなかなかおらず、「日本人より意欲がある」と近年は外国人留学生の採用を増やしているという。
大阪府内の食品メーカーは「埋もれた優秀な人材を見つけるため」(採用担当者)、これまで春だけだった採用活動を今年から秋も行うことにした。しかし、最近はインターネット上で面接内容を教え合ったりして同じような自己PRをする学生が多く、「個性の見極めが年々難しくなっている」(同)という。