中国がレアアース輸出枠「発給停止の情報」経産相
中国からの日本向けレアアース(希土類)輸出が滞っていることに関し、日本政府は24日、事実関係を把握するための本格的な調査に乗り出した。中国商務省は輸出禁止措置の導入を否定しているが、大畠章宏経済産業相は閣議後の記者会見で「複数の商社から輸出停止の情報が入った」と述べた。供給不安を背景にしたレアアースの価格高騰を懸念する声もあり、官民双方に波紋が広がっている。
大畠経産相は「中国商務省から『輸出禁止の事実はない』と聞いている」としたうえで、新規の輸出契約や船積み手続き、発給システムなどが停止されたとの報告を複数の商社から受けたと説明した。ただ、いずれも断片的な情報にすぎず、経産省として事実関係を把握し、日本企業などへの影響を調べる方針。禁輸が事実であれば世界貿易機関(WTO)への提訴も検討する構えだ。
経産相は尖閣諸島沖での漁船衝突事故との関係について「(日本以外の)他国への輸出は止めていないと聞いている。影響しているのか(もしれない)」とした。同日の会見では野田佳彦財務相が「日中関係が冷え込むのは世界経済にもマイナス」と指摘、海江田万里経済財政担当相も「深刻な問題だ。日本の経済成長の障害になっている」と述べた。
レアアースの取扱高が多い商社、双日は「21日から通関が滞っているが、中国当局から正式な通告は確認できていない」としている。ただ「21日前後に中国商務省と中国企業との間で、日本向け輸出を当分止める話し合いがあったようだ」と話す関係者もいる。
複数の商社によると、中国商務省はレアアースの生産者団体に対し、発給停止は「暫定的な処置」として伝えたという。
一般に国内メーカーは3カ月分程度の在庫を持っており、生産活動などにすぐに影響が出ることはないとみられる。
レアアースは世界生産の97%を中国が占め、日本も輸入量の9割を中国に依存している。中国政府が7月、2010年の希土類輸出許可枠を前年比4割減に決めると、主要品の輸入価格が昨年末の2~5倍に急騰。液晶ガラスの研磨剤に使うセリウムなど一部の品目は調達が難しくなった。品薄感が一段と強まれば、年明け以降、自動車や液晶パネルの生産に支障を来す可能性もある。