テナント撤退続く神戸ハーバーランド、「住」で再生
神戸市臨海部の再開発地区「神戸ハーバーランド」が再生に向け動いている。郊外型アウトレットモールの台頭などでここ数年、地盤沈下は著しかった。地価下落を逆手に、ここにきて高級マンションやレジャー施設の計画、開業が相次いでいる。街の人口増を期待する地元商業者らは今回がラストチャンスとみて、街の整備に一丸となっている。
眼前に海を望み、風が吹き抜ける神戸ハーバーランドの一角で、高層マンションの建設が進んでいる。マンション大手の大京の物件で、来年3月に完成の予定。そのすぐ隣でも、三菱地所による高層マンションの建設計画が浮上している。
大京の売り出し文句は「ハーバーランド初の民間マンション」。同社の担当者は「これだけ都心と海が近い魅力的な場所に、マンションがなかった方が不思議。最高の土地を適切な値段で購入できた」と話す。
両社のマンション建設地は近くの赤レンガ倉庫と一体で再開発する構想だった。神戸市は商業者などを募ったが、買い手が見つからず再開発を断念。土地は分割して売却され、マンション建設が決まった。
一体開発が実らなかった背景には、商業地としてのハーバーランドの地位低下がある。
ハーバーランドの街開きはバブル経済の余韻が残っていたころ。東の「みなとみらい21」(横浜市)、西の「ハーバーランド」ともてはやされた。だが、バブル崩壊で大型テナントが相次ぎ撤退。1995年の阪神大震災が追い打ちをかけた。
周辺環境も変わった。神戸市の西部には99年に複合商業施設「マリンピア神戸」(垂水区)が開業。北部には2007年、「神戸三田プレミアム・アウトレット」(北区)ができた。08年には西宮市に「阪急西宮ガーデンズ」が完成、三方を大型商業施設に囲まれた。
単純なショッピング街では対抗できない――。地元が危機感を募らせる中、飛び込んできたのがマンション計画だ。「人口が増え、地元消費が増える」。街を管理する神戸ハーバーランド会社の松下綽宏社長をはじめ、地元は街に「住」の機能が加わることを歓迎する。
「癒やし」の要素も生まれた。テナントの撤退が相次いでいたハーバーランドの中核商業施設の一つ、プロメナ神戸に大型温浴施設「万葉倶楽部」が今夏開業した。港の近さを生かし、最上階の18階では、足湯につかりながら港の夜景を楽しめる。宿泊も可能だ。
万葉倶楽部の開発担当顧問の増淵正明氏は「ハーバーランドは非日常的な雰囲気を演出できる場所」とみる。地元も「新しい顧客層を街に呼び込んでくれるのでは」(松下社長)と期待する。
これら外部企業の参入に歩調をあわせるように、地元も街の再整備に動き出した。
ハーバーランドは三菱倉庫のモザイク、外資によるファミリオなどオーナーが異なる商業施設の複合体。単一企業が一体運営する郊外型アウトレットモールとは異なる。それぞれが顧客を呼び込もうと設計した施設は「出入り口がわかりにくく、まるで迷路のよう」(ハーバーランド会社)と回遊性に乏しかった。
こうした状況を打開しようと、地元の商業者らで構成する協議会は「緊急まちづくり行動計画」を作成。案内表示の充実や、地下から地上のメーン通りにつながるエスカレーターの設置などを進めている。駐車場の共通割引や共同開催のイベントも実施。「これまでばらばらだったのが、一体となって街ににぎわいを取り戻す機運が高まってきた」(三菱倉庫)
ただ、個別の商業施設は景気低迷のあおりで厳しい状況が続く。
家族客向けのショッピングセンター、ファミリオは「テナントが入らず、強い危機感を覚えている」。約90のテナントブースがあるモザイクも「2~3年前は5~6店舗だった空き店舗が、今は10店舗近くある」という。赤字が続く神戸阪急の大西秀紀店長は「街全体の集客策は進んできているが、いかに店に足を運んでもらうかはこれからの課題」と話す。
街開きから18年。新施設が生む人の流れを、街全体の活力へと変えられるか。創意工夫が求められている。(神戸支社 福山絵里子)