中国人船長を釈放へ 那覇地検「日中関係を考慮」
尖閣沖衝突、処分保留
沖縄県の尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で、那覇地検は24日、公務執行妨害容疑で逮捕された中国人船長、セン其雄容疑者(41)を処分保留で釈放すると発表した。政府は「検察の判断」と強調するが、検察当局が「今後の日中関係を考慮した」とするように、外交上の配慮による政治決断といえる。船長は釈放され中国政府のチャーター機で25日未明に出国する。中国側は前向きな評価は避けている。
24日午後記者会見した那覇地検の鈴木亨次席検事は処分保留の理由について、巡視船の損傷が航行に支障が出るほどではなく、負傷者がいなかったことを挙げた。その上で「日本国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄を拘束して捜査を続けるのは相当でない」と、中国の強硬な反発が判断に影響したことを示唆した。
一方で「船長が巡視船に向けてかじを急転し、船首部を故意に衝突させたことは明白」と指摘。最終的に起訴猶予や不起訴となるかどうかについては「今後の情勢を踏まえて判断する」と述べるにとどめた。拘置期限前に釈放を決めた理由は「所要の捜査を終了する見通しが立ったため」とした。
那覇地検によると、船長は巡視船との衝突は認めているが、公務執行妨害容疑については否認。地検は船長の拘置を延長して取り調べを続けていた。
船長は今月7日午前、尖閣諸島沖で海保の巡視船の停船命令に応ぜず、かじを左に急転させて巡視船に衝突したとして、公務執行妨害容疑で8日に逮捕された。中国政府は強く反発し、船長の即時釈放を求めていた。
仙谷由人官房長官は24日午後の記者会見で「那覇地検の判断なのでそれを了としたい」と語った。那覇地検が「日中関係を考慮した」としたことには「検察官が総合的な判断の下に身柄の釈放などを考えたとすれば、そういうこともあり得る」と指摘した。
柳田稔法相は同日午後、記者団に「計画性がない、人的被害がない、船長に前科がない、日中関係の重要性などを考慮して処分保留のうえ釈放することにした」と述べ、指揮権の行使ではないことも強調した。馬淵澄夫国土交通相は「検察の判断で、我々は口を挟む立場にない」と表明。今後も海上保安庁による警備を続ける方針を示した。