ソーシャルメディア、まず情報収集から始めてみよう
近藤正晃ジェームス・ツイッター日本法人代表
ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアを使わない人の多くは、「共有するほどの情報がない」という方と「なんだか怖い」という方のいずれかのようだ。
「共有するほどの情報がない」という方々に知っていただきたい数字が一つある。ツイッターを使っている人の実に4割が、自らはツイートをせず、他のユーザーのツイートを見るために活用している。
ツイッターでもフェイスブックでも、情報を共有することだけが利用の目的ではない。他の人たちの情報を得ることも大きな利用目的だ。実際、政治でもスポーツでも芸能情報でも、自分が興味を持っていることをつぶやく人をフォローしてみれば、その楽しさ、便利さを感じられる。
次に「なんだか怖いから」と考えている方に向けてお話しさせていただきたい。
まずは、何が怖いのかを具体的に思い浮かべていただけないだろうか。もしかしたら「よくわからないから怖い」方もいらっしゃると思う。大丈夫。ソーシャルメディアは現実の世界のルールやマナーがそのままインターネットに移動したものだ。
親切にしてもらったらお礼を言う、法律に違反することや、他人に意味もなく失礼なことを言ってはいけないなど、日常の人間関係のルールでしてはいけないことはソーシャルメディアでもしてはいけない。これさえ守れば、まず問題はないはず。
とりあえずは前述のように情報を得るところから始めることをおすすめする。他の人たちの使い方を見ているうちにコツがわかるはずだ。
不安だからソーシャルメディアを利用しないという方の中には「炎上したら怖いから」という人もいる。フォロワー数が多い著名人を別にして、大多数の普通のユーザーが炎上するとしたら、それは社会的に物議をかもすコメントをしているケースが多い。
例えば「今、酔っ払い運転してます」のような法的にも問題があるようなツイートなどは他の人たちから大きな反応を得る可能性がある。匿名・実名を問わずツイッターやフェイスブックの向こう側には普通の人間がいるのだから、普通の生活でしてはいけないことはソーシャルメディア上でもしてはいけない。
企業についても考えてみよう。「炎上が怖い」からアカウントを持たないと考えられている企業もいらっしゃると思う。確かに、ツイッターやフェイスブックを使うことで、「あの会社のカスタマーサービスは対応がひどい」など、企業に対する苦情が目につくようになるかもしれない。
だが、考えてほしい。炎上が怖いからソーシャルメディアを使わなくても、その企業についての悪口はどこかでささやかれる。それはネットの掲示板サイトかもしれないし、レストランのテーブルかもしれないし、通勤電車の中かもしれない。苦情や不満はソーシャルメディアの有無を問わずに存在するのだ。しかも、企業は釈明やおわびの機会を持つことも難しい。
それであれば、いっそ、ソーシャルメディアを使って、自らへの批判について把握し、それに対して発言できる場を持ってはいかがだろうか。「カスタマーサービスの対応がひどい」と書かれたら、何が悪かったのかを把握し、誤解であれば解き、改善すべきところを把握する機会にしてはどうだろう。
ユーザーからのツイートすべてに反応する必要はないかもしれないが、ツイートを見ることで会社やビジネスを向上させるきっかけが見つかるかもしれない。
世間がその企業についてや競合商品についてどう考えているのかを無料で知ることができるのに、利用しないのはもったいない。なんだか不安だからソーシャルメディアを使わずにいる方は、利用している人たちを参考に、まずは情報を得るところから始めてはどうだろう。
[日経産業新聞2012年12月13日付]
(週1回程度で随時掲載)