日仏首脳、原子力の包括協力で合意
安保協力へ閣僚級会合
安倍晋三首相は7日、首相官邸でフランスのオランド大統領と会談し、包括的な原子力協力で合意した。新興国での受注を目指している日仏企業の原子力発電所の輸出を支援し、核燃料サイクルや高速増殖炉(高速炉)の研究開発、廃炉や除染で連携を深める。安全保障に関する外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)開催でも一致。共同声明を発表した。
首相は冒頭「日仏の特別なパートナーシップを強化したい」と呼びかけ、大統領は「関係を新たな局面に高めたい」と応じた。会談後の共同記者会見で、首相は「世界的な安全水準を高める観点から、日本の原子力技術への期待に応えていく」と述べた。
原発輸出では、ヨルダンなど第三国で受注を目指す三菱重工業・仏アレバ連合を、両国が官民を挙げて後押しする。5月にトルコでの受注が事実上決まった同連合の加圧水型軽水炉「アトメア1」への支援をはじめ、第三国での協力推進を共同声明に盛り込んだ。
原子力の安全強化に向けて原子力規制当局同士の協力拡大も決めた。日仏が連携を強める核燃料サイクルは、原発から出る使用済み核燃料から、まだ使えるプルトニウムやウランを取り出して加工、原発の燃料に再利用するもの。民主党政権は抜本的な見直しを検討したが、安倍首相は「継続して進めていく」との立場を示してきた。
共同声明では特に青森県六ケ所村の再処理工場に触れ「安全かつ安定的な操業の開始」を明記した。当初1997年完成予定だった日本原燃の再処理工場は技術的な問題で操業が遅れている。日本原燃とアレバは核燃料サイクルの早期安全運転のため覚書を交わした。
米国、オーストラリア、ロシアに続き4カ国目となる2プラス2の早期開催に向けた調整も急ぐ。武器に転用可能な民生品の輸出管理、防衛装備品の共同開発などを巡って政府間対話が進む見通しだ。仏企業がヘリコプターの着艦装置に使える部品を中国に売却していたことから、中国の軍備増強を防ぐ狙いがある。
共同声明は「新たな大国の台頭で生じる新たな課題に対応する」として「自由、民主主義、人権や法の支配の尊重」を打ち出した。海洋進出を強める中国を念頭に「航行の自由の維持」などの表現も盛り込んだ。大統領は共同記者会見で「国際法を大事にしなければならない」と強調した。
両首脳は日本と欧州連合(EU)で交渉中の経済連携協定(EPA)の早期締結を目指す方針を確認。北朝鮮に核、ミサイル計画の放棄に向けて具体的な行動をとるよう求めていくことで足並みをそろえた。大統領は国連安全保障理事会改革の一環として日本の常任理事国入りを支持した。
共同声明を実現するための今後5年間の行動計画や、文化に関する共同声明も発表した。オランド大統領は対日重視を鮮明にしており、今回の来日にあたり日本は対仏関係を強化するため仏大統領を国賓として17年ぶりに招いた。
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