iPSなど再生医療 推進へ法整備 リスクに応じ規制
厚労省、今国会に法案提出へ
厚生労働省はiPS細胞など人の細胞を使う再生医療の新法を今国会に提出する方針を決めた。治療時のリスクの高さに応じて3段階で規制、違反した場合は罰則を科す方針で、19日に開いた専門委員会で大筋で了承された。厚労省はiPS細胞を使った目の難病の臨床研究に向けて倫理審査を近く始める。一部の医療機関でトラブルも報告されるなか、安全性の高い再生医療を推進するための法整備を急ぐ。
法案のたたき台となる報告書づくりを手がける「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」(委員長=永井良三自治医科大学長)が19日あり、厚労省が原案を提示。医師や法律家、患者団体の代表らが議論した。患者への適切な説明方法など一部のテーマは持ち越しとなり、3月19日の次回会合で報告書案をとりまとめる見通し。
厚労省の原案では、再生医療や幹細胞以外の細胞を使った細胞治療を規制の対象とする。臨床研究を含むすべての医療行為に規制を設ける。
人の細胞の種類や医療リスクの高さに応じ、3段階の規制を導入。国内外で治療実績のないiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)などはリスクが高いとして、第三者が加わる「地域倫理審査委員会」(仮称)で審議した後、厚労相の承認を義務づける。
一部で臨床研究が進む体性幹細胞などを使う再生医療も地域倫理審査委員会で議論するが、国に届け出るだけで大臣の承認は不要。リスクが低いとされる医療行為は医療機関内の倫理審査会で議論し、国に届け出る。
再生医療を実施する医療機関は定期的に国に治療計画を報告。違反があり、厚労省が緊急に安全性を確保する必要があると判断した場合には、改善指導や中止処分を出したうえで罰則を科す。細胞培養や加工を手がける施設にも基準を設ける。
現在、再生医療の臨床研究には国の指針がある。しかし一部の民間クリニックなどが自由診療として効果の薄い再生医療を実施しており、低い安全性などが問題視されるケースもある。