軍民一体で「富国強軍」 中国国防白書
【北京=島田学】中国は16日に発表した2年ぶりの国防白書で、軍民が一体となって「富国強軍」を目指す方針を鮮明にした。中国の経済発展や中国企業の積極的な海外進出に伴って「海外における利益も中国の国家利益の重要な要素となった」と指摘。こうした経済権益の確保を名目に、中国軍が今後、活動範囲を広げる可能性も高い。国を挙げての取り組み強化は、周辺国の懸念を招きかねない。
白書は「海洋権益や宇宙、サイバー空間での安全や利益を断固守る」とし、3分野を中心に軍備増強する考えを示した。
海洋権益では「海洋は中国の持続可能な発展のための資源を保障するものだ」と指摘。戦略物資を輸入する際のシーレーン確保なども「軍の重要な職責」だとした。中東からの石油輸入ルートに当たる南シナ海やインド洋での活動を積極化する可能性もにじませた。中国軍事科学院の陳舟研究員は「中国を取り巻く環境の変化と共に、海軍力を増強するのは必然だ」と語った。
白書をまとめた中国軍総参謀部の幹部は16日の記者会見で、東シナ海での沖縄県・尖閣諸島を巡る日本との対立や、南シナ海での領有権争いを念頭に「戦争には反対だが、国家の核心的利益は絶対に犠牲にしない」と、領土問題で妥協しない姿勢を強調した。
サイバー空間を巡る安全保障では、民間企業との連携を緊密にし、国の総力を結集して技術の向上や最新技術を扱える人材の戦略的育成に取り組む必要があると主張した。中国発のサイバー攻撃に神経をとがらせる米国などを刺激しそうだ。
共産党は昨年の党大会の活動報告で「我が国の国際的地位にふさわしい強固な国防と強大な軍隊をつくらねばならない」と明記した。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が15日に公表したデータによると、2012年の世界全体の軍事費は前年比0.5%減の1兆7500億ドル(約172兆円)だったのに、中国とロシアは大幅に増額したと指摘している。