原発事故被災住民の健康管理「国の継続支援必要」 規制委提言
原子力規制委員会(田中俊一委員長)は6日の定例会合で、東京電力福島第1原子力発電所事故を受けて福島県が実施している「県民健康管理調査」について「国が責任を持って継続的な支援を行う必要がある」などとする提言を決めた。提言に強制力はないが田中委員長は「(環境省など関係機関に)しっかりと受け止めていただくようお願いしたい」と述べた。
福島県の健康管理調査は全県民を対象にし、問診票で事故直後にいた場所やその後の移動先などを答えてもらい被曝(ひばく)線量を推計するほか、18歳以下の県民36万人を対象に甲状腺の超音波検査を実施している。ただ問診票の回答率は2割強と低い。
提言は「(住民の健康管理の)基本となる被曝線量の把握が一部にとどまっている」と指摘し、住民の事故後の行動調査を速やかに徹底し、個人の線量をできるだけ正確に推定するよう求めた。長期的な被曝線量を正確につかむため、空間線量の高い地域では積算個人線量計による実測が必要とした。
そのうえで、福島県の健康管理調査は「対象の住民が100万人を超える大規模なもの」であるとして「国の責任のもとで、県や市町村、地域の医師会や医療機関が連携して取り組むべき」とした。田中委員長は「今後の具体的な取り組みで規制委がどういう役割を果たすべきか検討したい」と述べた。
一方、これまでの被曝による健康への影響については、福島県の同調査結果から「発がんリスクの明らかな増加が予測されるほどの線量は確認されてない」とした。
ただ住民は健康不安を抱えながら生活を送っており、「健康状態を継続的に把握して必要に応じて適切な医療が受けられる体制が必要」とした。また放射線量を懸念して屋外での運動を控えた住民に肥満や血糖値上昇、高脂血症などの傾向が見られると指摘し、予防対策を講じるよう求めた。
規制委は昨年11月、放射線医学の専門家などで構成する有識者検討チームを立ち上げ、「県民健康管理調査」などを検証してきた。2月の有識者会合では、規制委事務局側が同調査は「適切であり評価できる」とのとりまとめ案を示した。
このとりまとめ案について一部の有識者が健康管理調査への問診票の回答率の低さなどを指摘。そうした意見を受け、今回の提言からは「適切」との文言を削除した。