原子力規制委、自民圧勝で「政治の圧力」警戒
政府からの独立性が高い機関として9月に発足した原子力規制委員会は原子力発電所の安全基準の作成や原発周辺の活断層に関する調査を予定通り進める方針だ。脱原発を急いで進めるのに慎重な自民党が衆院選で圧勝し、エネルギー政策の練り直しが課題に浮かぶ。規制委の内部では「政治からの圧力が強まる可能性は高い」と警戒する声が出始めている。
規制委は17日、原発の事故時の監視体制や地震・津波の新基準に関する検討会合を開いたほか、ベトナム科学技術省副大臣の表敬訪問を受けた。20日に東北電力東通原発(青森県)の活断層の評価会合を控えるなど今後も重要な日程が並ぶ。
規制委は年内に原発の新しい安全基準について骨子案をつくる予定だ。関西電力大飯原発(福井県)の追加調査も年末に計画している。事務局である原子力規制庁の幹部は「政権交代にかかわらず、やるべきことをやるだけ」と選挙結果を冷静に受け止める。
一部には規制委の独立性が弱まることへの懸念も広がりつつある。自民党は政策集で「規制委による専門的な判断を優先する」方針を示しつつ、「再稼働の可否を順次判断し、全ての原発について3年以内の結論を目指す」意向も強調した。
規制委は国家行政組織法に基づき、より独立性の高い「3条委員会」に分類される。技術的な視点や専門家の見解は重んじられる見通しの半面、政府との役割分担が民主党政権と同じかどうかは予断を許さない。自民党では安全性を確かめたうえで原発の早期の再稼働を促す声が根強い。
田中俊一委員長ら5人の委員の国会同意人事の手続きも済んでいない。民主党内の意見がまとまらず、先送りされてきたためだ。新政権が同意人事をどう扱うかが焦点となり、規制庁幹部は年明け以降「委員長が国会に呼ばれることも増える」と予測する。
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