イタリア、連立協議の結論持ち越し
【ジュネーブ=原克彦】イタリアのナポリターノ大統領は29日、政権発足に向けて各政党連合の幹部らと協議したが、具体的な進展はなかった。大統領府報道官は「(大統領が)熟慮するため休止する」と発表、判断を30日以降に持ち越した。首相指名権を持つ大統領は、超党派による暫定政権を探る構えだが、政権樹立を断念し再選挙となれば、欧州債務危機への不安が再び強まる懸念もある。
上下院で第1党の中道左派連合は、代表のベルサーニ民主党書記長(党首)が大統領との協議を欠席。代理で出席したレッタ民主党副書記長は大統領との会談後、「責任を持って大統領の判断を支持する」と述べた。だが、第2勢力でベルルスコーニ前首相率いる中道右派連合との「大連立」には消極的だった。
中道左派は中道右派との連立を拒み、新党「五つ星運動」に協力を求めたが、連立工作は失敗。大統領は再選挙を避けたい考えで、2011年に経済学者のモンティ氏を首相に抜てきしたように、中立的な人物を首相に指名する可能性を検討しているもよう。
ただ中道右派と五つ星は29日、政治家を排除した「実務家内閣」の発足に改めて反対を表明。仮に大統領が民間人を首相に指名しても、単独で過半数を確保する政党連合がない上院の信任を得られる見通しは立たない。
ANSA通信は、それでも大統領が超党派内閣の発足を試みる可能性があると伝えた。内閣に一人も職業政治家がいないモンティ政権と異なり、各政党連合から閣僚を選んで事実上の大連立を促すとの見方も浮かぶ。
2月下旬の総選挙では、下院とほぼ同等の権限を持つ上院で過半数に届く政党連合が出なかった。3月15日の議会招集後も、政権発足への連立協議は難航。大統領が調整に入ってベルサーニ氏に連立政権づくりを促したが不調に終わった。