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鴻海も投資 しぼむデジカメ市場の「革命児」、大ヒットの秘密

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 ここ数年、急速な勢いで市場が縮小しているコンパクト型のデジタルカメラ。この厳しい環境下で、発売から約3年で300万台以上を出荷した大ヒット商品がある。米国シリコンバレーのベンチャー企業が開発した、「GoPro」シリーズだ。大手カメラメーカーが苦境に陥るなか、GoProはなぜ元気なのか。その秘密に迫った。

コンパクト型のデジタルカメラは存亡の分岐点に直面している――。

デジタルカメラ市場に関する直近のデータは、この言葉が大げさとは思えないほど、苦境を映し出している。カメラ映像機器工業会(CIPA)によれば、2012年のデジタルカメラの出荷台数は、前年比15%減の9810万台。このうち、コンパクト機が多くを占めるレンズ一体型は同21.9%減の7800万台と大幅に減った。

2013年の見通しも芳しくない。レンズ一体型は6430万台と2012年に比べて、さらに17.6%減少する見込み。実に1400万台近い市場が1年で消える計算だ。もちろん、大手カメラメーカーが販売台数の目標を下方修正する動きも相次ぐ。

市場を侵食する主犯は…

コンパクト型カメラの市場を侵食しているとみられる主犯格が「スマートフォン(スマホ)」であることは、多くのメディアが論じている通りだ。スマホはインターネットのアクセス機能をあらかじめ備えた通信端末。そのカメラ機能を使えば、利用が広がるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などのソーシャルメディアに写真を簡単に投稿できる。

写真を加工するアプリも人気を博している。撮影自体の機能性はカメラ専用機に一日の長があるかもしれないが、写真というコンテンツがソーシャル時代のコミュニケーションツールとなった今、撮影後の楽しさという点ではスマホが上だろう。

鴻海が2億ドルを投資

そのスマホの存在をどこ吹く風と、売れ続けているコンパクト型カメラがある。米国シリコンバレーのベンチャー企業Woodman Labsが開発した「GoPro」シリーズだ(図1)。「アクションカメラ」と呼ばれる分野の代名詞になっている製品である。

同社は2012年12月に、台湾Hon Hai Precision Industry社(鴻海、通称フォックスコン)から2億米ドルの投資を受けると発表した。フォックスコンは、シャープへの出資で注目を集めたEMS(電子機器の受託生産サービス)世界最大手だ。

GoProシリーズが、大手カメラメーカーに与えたインパクトは大きかった。

アウトドアスポーツ愛好家の心つかむ

GoPro本体が備える基本機能は、極めてシンプルである。170度の広角レンズで動画と写真を撮影できること。それだけだ。デジタルカメラでは当たり前の写真や動画を確認する液晶モニターすら標準では備えていない。

主な利用者のターゲットは、モータースポーツやサーフィン、自転車といったアウトドアスポーツを楽しむ人々である(図2)。機能は限定的であるものの、用途に合わせた防水・防塵用のケースや、さまざまな場所に取り付けるためのアクセサリーといった豊富な付属品が好評を得ている。

アウトドアスポーツの愛好家が自分のプレーや技量を手軽に撮影し、動画共有サイトやSNSなどで友人と共有したいニーズに合致した。

「もはや"ニッチ"ではない」

2009年末に第1号機を発売してから、3世代目までのシリーズ合計で300万台超を販売した。価格は、付属品とのセットで3万~4万円ほどである。

現在、一般的なコンパクト機の平均販売単価は1万5000円ほどで、1万円を切る価格で売られる機種も少なくない。そうした逆風下で、1万円を切る機種よりも少ない機能の製品が値下がりせずに売れている。

この状況を見た大手カメラメーカーが、あわててアクションカメラ分野に参入する動きがこの1年ほどで相次いだ。「『GoPro』は、もはや"ニッチ"ではない。存在を無視しては新しい製品を開発できなくなった」。ある大手カメラメーカーの開発責任者は、自身が受けた衝撃をこう語る。

他社参入もシェア9割を維持

それでも、Woodman Labsによれば、アクションカメラ分野でGoProの市場シェアは約9割と、今のところ他社の追随を許していない。家庭用ビデオカメラとして捉えた場合にも、世界市場シェアは2割に達しているという。

同社は売上高を公開していないが、GoProのグローバルコミュニケーションやソーシャルマーケティングを担当するSenior DirectorのKash Shaikh氏は、「売り上げは、1年に3倍のペースで増えている」と胸を張る。「我々は、新しい分野を切り開いた。スポーツやドキュメンタリーの撮影で重宝されたことで急成長できた」(同氏)。

ちなみに、GoProの日本代理店は、競技用自動車の企画開発に携わるタジマモーターコーポレーション。同社 会長兼社長の田嶋伸博氏は、「モンスター田嶋」として世界的に有名なラリードライバーだ。米国のレースで撮影用に導入したGoProに感銘を受け、その足で販売交渉に向かったという。

なぜ、GoProは新分野を築けたのか。この質問にShaikh氏は二つの理由を挙げた。

利用シーンを加味したデザイン

一つは、その形状だ。GoProは外形寸法が42mm×60mm×36mmほどで、重さが100gを切る小さなカメラである。一般的なコンパクト機とほぼ同じ直方体の形状をそのまま相似形に小さくした。この形が、アウトドアスポーツなどで使いやすかったのだという。「直方体の形状は、さまざまな場所に取り付けやすい。小型にしたことで、撮影する向きなどを選ぶ自由度が高くなった」(Shaikh氏)。

例えば、他のメーカーのアクションカメラには、円筒形など奥行きが長い形状の製品がある。この形状では、アウトドアスポーツの現場で取り付けられる場所に制限が出てくるのだという。

Woodman Labsの創業者はサーフィンが趣味(図3)。自分の技術を自慢したいというキッカケでGoProを開発した。「それまでは、自分の活動を写真や動画に残す手段がなかった。GoProユーザーは、自分の生活をキャプチャーしたいんだよ」と、Shaikh氏は話す。実際の利用シーンに合わせたユーザー体験を高めるデザインが、ヒットの秘訣だったというわけだ。

1分間に1コンテンツのペースで投稿

Shaikh氏が挙げたもう一つの理由は、ソーシャルメディアのコミュニティーをうまく作り上げたことである。「ソーシャルメディアのGoProコミュニティーは、とても活発だ。FacebookやYouTubeには、GoProで撮影した写真や動画が1分間に1コンテンツのペースで投稿されている」。

もちろん、Facebookなどを通じたユーザーとのコミュニケーションの工夫はあるが、ここにも利用シーンに合わせたカメラ自体の機能が隠れている。

例えば、ボタン一つで撮影した動画の上下を反転できる機能だ。スポーツの撮影では取り付け位置に制限があるため、カメラを上下逆さまに取り付けなければならないことも多い。そうした場合でも、動画や写真の上下を反転する変換の手間を省いて、ソーシャルメディアにすぐに投稿できる。

170度の広角レンズの採用もその一つだろう。広い視野角ならば、いちいち撮影アングルを気にしなくても、撮影ボタンを押しておくだけで必ず何かが写っている状態にできる。

放送業界が見初めた価格・画質・利便性

「おもちゃのように小さいが故に画質が低い」という指摘もGoProには当てはまらない。放送業界がGoProを本格的に採用していることが、それを裏付けている。

日本でも、バンジージャンプや絶叫マシンに挑戦するシーン、登山などの探検もののシーンでヘルメットに取り付けたGoProをテレビで見ない日はない。これが言い過ぎではないほど、番組制作の現場に浸透している。

最新機種の「HERO3」では、毎秒15フレームとフレーム速度は低いものの、4K×2K(3840×2160画素)のいわゆる「4K」動画を撮影できる機能を加えた(図4)。2012年10月の発売以降、在庫薄の状況が続くほどに売れているという。「すべてのユーザーが4K動画を撮影するわけではない。ただ、プロのユーザーを中心に撮影したい人もいる。そのために機能を用意していくことが大切だ」(Shaikh氏)。

価格は業務用小型カメラの十分の1

フォックスコンが投資したことからも分かるように、GoProはフォックスコンが生産している。ただ、ハードウエアやソフトウエアの設計は、丸投げではない。すべてWoodman Labsの社内でまかなっている。4年前に7人だった社員は1年前に150人に増え、現在はさらに2倍以上に増えて350人規模になった。

CMOS画像センサーや画像処理LSI(大規模集積回路)は、もちろん外部メーカーのものを採用している。HERO3に搭載されているCMOSセンサーは、ソニーの裏面照射型「IMT117CQT」。画像処理LSIは、米Ambarella製の「A7」である。Ambarellaでマーケティング関連を統括するVPのChris Day氏は、「GoProは他のメーカーと目的意識が違う。画質にはものすごくこだわる」と証言する(図5)。

「放送局などのプロに使ってもらうことは、我々の夢だった。だから、とても興奮している。製品を低価格にできたことが大きかった」(GoProのShaikh氏)。同じ用途に使ってきた従来の業務用小型カメラの価格は数千米ドル。それに比べると価格が十分の1ほどの格安カメラで、放送に十分な映像を撮影できる。これが採用拡大の理由だ。

今や、GoProの新製品に歩調を合わせて画像処理LSIを進化させているAmbarellaのDay氏は、次のように指摘する。

スマホではできないことを追求

「スマホではできないことを追求していく。これが今後のカメラ専用機の方向性だろう。まさにGoProが実践しているカメラ開発だ」(AmbarellaのDay氏)。

ここにきて、大手カメラメーカーは、コンパクト機に搭載するスマホとの連携機能の開発に躍起だ。無線LANやNFC(Near Field Communication)などの近距離無線通信技術を備えるコンパクト機が続々と登場している。スマホを経由してSNSなどに投稿しやすい機能を付加することが通信技術を拡充する目的である。

GoProもその方向に進んでいる。HERO3には、無線LAN機能を標準搭載。カメラを操作したり、SNSに投稿しやすくしたりするスマホ向けのアプリも用意した(図6)。2011年3月には、映像編集ソフトを開発する米CineFormを買収。「モビリティは重要なポイント。映像編集をもっと簡単にしたい。それが今後の方向性だ」と、Shaikh氏は買収の背景を説明する。

異なるスマホに対するアプローチ

しかし、同じ方向を歩んでいても、大手メーカーのカメラとGoProは、スタートポイントとスマホに対峙する立ち位置が大きく異なるように見える。

一方は、開発者自身が「本当に欲しい」と考え、自分が使いたい機能を加えてきたら、いつの間にかプロにも見初められる機器が完成していた。これまでと同じ進化の方向にスマホがパートナーとして存在する。

もう一方の大手メーカーは、従来の枠組みで機能を進化させてきたら、いつの間にかスマホという強力なライバルが出現。そこから逃れるために新たな機能を加えている。

コンパクトカメラの将来を決めるもの。それは、従来の枠組みから抜け出し、本当にユーザーが求める機能を考え抜いた新しい発想の先にある。

(Tech-On! 高橋史忠、日経エレクトロニクス 久米秀尚)

[Tech-On!2013年2月25日の記事を基に再構成]

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