[FT]パキスタン政治、見通し難の状態
(2013年1月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
政治の世界でパキスタンの首相ほど危険な職はないだろう。ラージャ・ペルベズ・アシュラフ現首相の前任者は21人いるが、うち1人は処刑され、2人が暗殺された。そしてアシュラフ首相に最高裁から汚職容疑で逮捕命令が出された。
アシュラフ氏は先月、次の政府も選挙で選ばれ、パキスタンで初めて2代続けて有権者が選ぶ政府が誕生するだろうと自信を示したばかりだ。しかし、ここ7日間に起きた出来事によってパキスタンの政治は彼の運命同様、見通しが困難な状態に陥った。
1週間前、クエッタで爆弾事件が起き96人が死亡した。少数派シーア派住民がスンニ派過激分子の標的になっており、怒ったシーア派の人たちが抗議運動を始めた。
穏健なスフィ派宗教指導者タヒル・カドリ氏が最近海外から帰国し、数千人の支持者を率いて反政府デモを展開、イスラマバードの一部を占拠している。治安当局が彼の背後に控えているとの見方も出ている。
カシミールではインドとの軍事衝突が発生した。
次に何が起きるかは政治の舞台にいる人物・集団の間の複雑で時に水面下で繰り広げられる相互作用に左右されるだろう。舞台に上がっているのは、ザルダリ大統領とアシュラフ首相の政府、イフテカー・ムハンマド・チョードリー最高裁長官が率いる司法界、アシュファク・ペルベズ・カヤニ将軍・参謀長が率いる陸軍、そして汚職や文民指導者たちの無能に抗議するカドリ氏だ。
ほかにタリバンなど血に飢えたイスラム過激派、ナワズ・シャリフ氏や元クリケット選手のイムラン・カーン氏などの文民政治家がいる。
今後の展開についてはいくつかのシナリオが考えられる。ザルダリ大統領がアシュラフ首相を見捨て、次の総選挙までの暫定首相を任命することがありうる。彼がデモに譲歩し、議会を解散するといった道もある。
これまでのような軍事クーデターがすぐに起きるとみる外交官、国内政治評論家はほとんどいない。陸軍は司法界同様に威力を誇示しており、混迷の度を深める政治の舞台に再度登場する機会をうかがっている。
By Victor Mallet
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