厚労省、生活保護引き下げ検討 低所得世帯上回る
厚生労働省は16日、生活保護の支給水準の検証結果を公表した。物価下落が進んだ結果、子育て世帯などで生活保護のうち生活費に充てる「生活扶助」が、保護を受けていない低所得世帯の生活費の水準を上回る「逆転現象」が判明。夫婦と子ども2人の4人家族の場合、保護を受けない世帯の生活費が生活扶助を14.2%下回った。厚労省は検証結果を受け、2013年度から支給水準を引き下げる検討に入る。
厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の生活保護基準部会が報告をまとめた。検証は5年に1度。厚労省は6通りの家族構成ごとに、全国平均で生活保護受給者と一般の低所得層(年間収入を高い順から並べた下位10%)の生活費にどれだけ差があるか調べた。
夫婦と子ども2人の4人家族が生活保護を受けた場合、現行基準では月18万6000円の生活扶助を受け取れる。これに対し、生活保護を受けていない低所得者の生活費は月15万9000円で、14.2%の差があった。単身世帯でも1.7%の差があったが、人数の多い世帯ほど差は大きい。地域別では地方よりも都市部で高めの傾向にある。
こうした差が出た背景には、デフレで物価が下がっているのに、扶助費の水準を見直してこなかったことがある。07年の前回の検証でも夫婦と子ども1人の3人家族で、生活扶助が低所得世帯の生活費を1600円上回っていたが、経済環境を理由に改定を見送っていた。
一方、全体の約半分を占める60歳以上の高齢者世帯では「逆転現象」は生じていない。60歳以上の単身者では4.5%、60歳以上の夫婦では1.6%、保護を受けない世帯の生活費が生活扶助を上回った。同じ生活保護の受給者でも、支給水準にばらつきが生じている。
厚労省は今後、1月末に決定する13年度の予算編成過程で、経済や雇用情勢をにらみながら支給水準の見直し作業に入る。田村憲久厚労相は「下げないことはない」としているが、激変緩和策として数年かけて適正な水準に引き下げる方針だ。厚労省は「検証結果がそのまま支給水準にはならない」と説明する。
自民党は衆院選の公約に生活保護の給付水準の1割引き下げを掲げた。今回の検証では保護費の方が少なかった高齢者世帯が全体の約半分を占めており、公約通りの引き下げは難しい情勢だ。連立政権を組む公明党は引き下げに慎重な立場で、政権与党内の調整も必要になる。