震災の波動は超高速 名大、震源2000キロ先上空で観測
東日本大震災のマグニチュード(M)9.0の地震で生じた波動が、震源から2千キロ近く離れたオホーツク海域の電離圏(上空250キロ付近)を超高速で伝わっていく状況を、名古屋大太陽地球環境研究所(太陽研)が北海道陸別町で運用している大型短波レーダーが捉えていたことが26日までに分かった。
太陽研によると、地震の波動は、地表面や海表面の揺れで大気が盛り上がることで発生し、電離圏まで到達すると考えられている。今回、秒速6.7キロという超高速波動の観測に世界で初めて成功。太陽研は「観測が難しい海域などでも、波動が広域に伝わっていく様子を電離圏の変動データから推定できることが分かった」としている。
太陽研の西谷望准教授のチームは、大震災が発生した2011年3月11日午後2時46分直後のオホーツク海上の電離圏を調査。午後3時以降、電子の層が激しく揺さぶられており、コンピューター解析で、超高速波動の伝搬状況が分かった。
これまでは全地球測位システム(GPS)受信機などを使った方法により、世界各地の地震の波動が電離圏で観測されてきたが、秒速4キロ程度までしか捉えていなかった。GPSでは上空90~千キロに広がる電離圏全域の平均的な状況が分かるが、大型短波レーダーは250キロ付近に観測を絞り込むため、詳細な分析が可能という。
大型短波レーダーは06年、北海道陸別町に設置された。北から北東に向かって扇状に最大到達距離約3500キロの電波を発射し、太陽が放出する粒子などが地球環境に与える影響を調べている。同様のレーダーは世界各地に約30基ある。〔共同〕