東北電値上げ申請、復興の足かせ懸念 企業17%超
東北電力は14日、政府に家庭向け電気料金の平均11.41%引き上げを申請した。政府の認可が不要な企業向けは17.74%の値上げとし、いずれも7月の実施を目指す。家庭向けはもちろん、企業向けの大幅な値上げに対し「被災企業が事業を再開するにあたり、負の要因になりかねない」(宮城県の村井嘉浩知事)と復興の足かせになるとの懸念が出ている。
東北電の海輪誠社長は同日、仙台市で記者会見し、値上げ申請について「膨大なコスト負担を現行の料金水準で吸収し続けることは極めて困難。大変ご迷惑をおかけし誠に心苦しい」と話した。
しかし、被災地ではようやく事業を再開した企業も多く、値上げに反発する声も多い。水産加工会社、かわむら(宮城県気仙沼市)は年5000万円以上の電気料金を払っているが、値上げが実施されれば約1000万円の負担増となる。
被災した23カ所の工場のうち再建できたのはまだ半数にとどまる。川村賢寿社長は「工場再建のための建築資材も高騰しており、消費税も上がる。復興の足かせは増えるばかりだ」と憤る。
東北電が値上げするのは、原子力発電所の運転停止に伴う火力発電所の燃料費の増加が主因だ。東通原発の再稼働は2015年7月、震災の復旧工事が続く女川原発の再稼働は16年度以降になるとし、燃料費は3割増えると見積もった。
原子力規制委員会の新安全基準への対応もコスト増につながる。フィルター付きベント(排気)設備の導入などに3年で1820億円を投じる。
コスト削減も進める。年平均の経費削減額は806億円。社員の年収は11年度の平均807万円から642万円まで減らす。定期採用も約4割減らして人件費を圧縮する。イメージ広告やオール電化の宣伝は全廃する。
しかし、津波で顧客の工場や家屋が流され電力需要が減っていることもあり、約2000億円の収入不足となる。これを埋めるには値上げが必要との判断だ。
震災後に値上げ申請したのは東京、関西、九州の各電力に続き4社目。東北電は申請ベースで関西電の11.88%に次いで高い上げ幅となった。今後、経済産業省の専門委員会の審査を受けて、値上げ幅が圧縮される可能性がある。他の電力会社では四国電力が20日に申請、北海道電力は年度内に最終判断する。