原発に放水砲など義務づけ 規制委が安全基準原案
原子力規制委員会は11日、7月に導入する原子力発電所の新安全基準の原案について専門家の検討会合を開いて議論した。原発が機能を失った場合に備えて原子炉を冷やす施設や、原子炉に大量の水を放って火災を消す放水砲システムの配備などを求める。今後、専門家の意見を踏まえて原案を改定し、1月末にも公表、国民の意見を募る。
この日議論した新安全基準について、規制委は4~5月にも条文案を示し、再び意見公募したうえで、7月に全国の原発で導入する。その後、再稼働の審査に入る方針だ。一部対策については実現まで猶予期間を設け、未完成でも再稼働を認めることを検討している。
新安全基準で求める冷却施設は原子炉を冷却する非常用電源や注水ポンプ、第2制御室などを設ける。放射性物質を取り除くフィルター付きのベント(排気)設備も設置。原子炉建屋からは100メートル程度離し、飛行機が墜落しても原子炉と同時に壊れないようにする。
毎分数十トンの水を高圧で放出する放水砲は、消火や放射性物質の飛散防止などに使う。福島原発事故では使用済み核燃料プールに消防車などで放水したが、当初、能力が足りず水が届かなかった。
国内の石油コンビナートでは、2003年の十勝沖地震による原油タンク火災を受け、設置が義務づけられた。
老朽化した原発の安全対策も強化する。可燃性の電源ケーブルの交換や、非常用の炉心冷却装置などの配管の増設を求める。
新安全基準では地震や津波、航空機墜落やテロ、火災対策などを大幅に強化する。仮に炉心溶融(メルトダウン)のような過酷な事故が起きても、放射性物質の放出を抑える。米国や欧州の対応を参考に、巨大地震や津波など日本特有のリスクにも対策を求める。