愛犬の健康はクラウドで管理 富士通、歩数計で運動量や体調把握
富士通は家庭で飼育しているペットの健康状態を管理するクラウドサービスを開始する。ペットに専用の歩数計を装着し、運動量やストレス、周囲の気温などを測定。データをインターネット経由でクラウド上にある同社サーバーに送信して蓄積・分析する。早期に体調の異変に気づきやすくする。まずは犬向けにサービスを展開し、動物病院やペット向け保険会社との連携も検討する。
日本で犬を飼っている世帯数は約950万で、全世帯の17.7%にのぼる。ペットは「家族の一員」として定着していることから、IT(情報技術)を活用した新サービスで健康管理に気を使う飼い主の需要を喚起する狙い。
センサー内蔵の「犬用歩数計」を開発
犬用の歩数計「わんダント」(予想実売価格は1万円前後)を28日に発売する。3軸の加速度センサーと温度センサーを内蔵し、人用の歩数計と同様に犬が歩いたり走ったりすると歩数をカウントする。「歩数を正確に計測できるよう、数百頭の犬の歩行データを収集して、前脚の動きを抽出するアルゴリズムを開発した」(富士通 ユビキタスサービス事業本部の三ッ山陽子マネージャー)。
加えて、犬がブルブルと震える動作の回数と、周辺の温度も記録する。皮膚のかゆみやストレス、暑さ・寒さなどによって犬の体調に異常が起きた場合に、飼い主が早期に気づきやすくなるとする。
収集したデータは、わんダントに内蔵してある非接触型ICカード「FeliCa」機能を使い、FeliCa機能内蔵のパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)にいったん取り込み、そこから富士通のサーバーに送信する。
犬の体調異変を素早く把握
飼い主は、パソコンのWebブラウザーまたはスマホのアプリで、日々の歩数や震えなどの推移をグラフで確認できる。
このほか、犬の名前や年齢、体重、食事、排せつ、散歩などの履歴を手動で登録したり、犬の写真をアップロードしてフォトアルバムを作りツイッターやフェイスブックに投稿したりできる。初年度の利用料は歩数計の本体価格に含まれるが、購入後2年目からはクラウドサービスの利用料として月額420円かかる。
通信機能としてFeliCaを採用した背景を「Bluetoothなどの通信モジュールを内蔵すると、ボタン電池では1カ月程度で交換が必要になり使い勝手が悪い。充電池の搭載も検討したが、本体が大型化してしまい小型犬に装着しづらくなる。FeliCaとすることで、本体を16グラムと軽量にでき、ボタン電池で4カ月程度交換せずに使える」(富士通)と説明している。
ITでペット関連の新市場を開拓へ
国内のペット関連市場は3000億円を超える規模とみられるが、近年は成長が鈍化。また、ほとんどはペットフードで、「ペット関連のITサービスはほぼ皆無」(富士通)。一方、ペット向け保険は2008年の約30万件から12年には60万件に倍増する見込み。富士通は、ペットの健康に関するサービスは成長が見込めると判断し参入した。
「犬のケアはお金がかかるもので、例えば体毛のトリミングだけでも1万円程度かかる。(わんダントの1万円前後という価格帯は)人用の歩数計と比較すると高く感じるが、愛犬のケアをきちんと考えている人たちには受け入れてもらえる金額だと考えている」(富士通)
今後は、収集したデータを動物病院と共有して診察に役立てたり、収集データを基にして犬の種類の違いや日ごろの散歩の有無が犬の健康にどのように関連しているかを統計的に解析したりして、サービス拡充を図る。同社では今後3年間で40万件の会員獲得を目指す。
犬と並んでペットとして広く飼育されている猫については「犬と違って歩行時に縦方向の揺れが小さいため、犬と同じアルゴリズムでは歩数を計測できない」(富士通)との理由で参入当初のサービス提供を見送ったが、引き続き研究開発に取り組んでいくという。
(電子報道部 金子寛人)