電子書籍端末はiPad、キンドルが拮抗
クイックVote第108回解説
読書の秋ともいいますが、新型タブレット(多機能携帯端末)や配信サービスの登場により、燈火(ともしび)のもとで端末画面の字を追う人々が増えるのでしょうか。電子版読者の皆さんに「電子書籍を買いますか」と質問したところ、「ぜひ買いたい」との回答が37.8%に対し、「買うつもりはない」が30.6%でした。昨今は電子書籍をめぐる話題がサービス、端末ともに盛んに取り上げられているため、投票がもう少し「ぜひ買いたい」に傾くかと思いきや、読者は意外に慎重なようです。
読者の冷静な反応は電子書籍を「すでに持っている」人が31.6%に上ることからくるのかも知れません。1冊でも電子書籍を買ったことのある人が全体の3分の1近くもいて、さらに買い増すべきかどうか判断をしかねているという構図にも見えます。
読者のコメントにそうした心理が表れています。「すでに持っている」と回答した方のご意見です。
○テスト的に買ってみた(50代男性)
○今後もいろいろ試していくと思う。検索機能はまだまだ(60代男性)
すでに持っている方の中には「10年以上前から電子書籍を買いためてます。数百冊はあると思う」(40代女性)といった方もおられます。ただ、ヘビーユーザーの中には英語など外国の書籍を読んでいる方が少なくないようです。
30代男性が「品ぞろえを充実させてほしい」と指摘するように、電子書籍の日本での命運は、日本語の書籍をどこまで増やせるかにかかっています。その意味で、本命視される米アマゾン・ドット・コムが電子書店「キンドルストア」のサービスを日本で始めたことに期待する声も寄せられました。
電子書籍の売れ行きを左右するもう一つの重要な要素が価格ですが、「紙より高くても買う」との回答は1.6%、「同等でも買う」は13%にとどまりました。44.4%で最大勢力の「3~5割程度安ければ買う」を中心に、多くの読者が「紙より安い電子書籍」に期待しています。
興味深いのは「紙より高くても買う」や「同等でも買う」に投票した読者の見方です。
○(電子書籍は)かさばらない、というのが最大の利点だと思いますので、価格は同等で構わないと思います(40代男性)
○値段が同等でも、購入にかかる手間が格段に少ないので買う。(60代男性)
つまり、電子書籍の省スペース性や書店に足を運ばなくても良い点を考慮すると、紙の書籍と大して変わらない値段でも、購入に値するとの意見です。
電子書籍をビジネスにしたい企業は、こうした声を大切にして、期待に十分にこたえられるサービスを展開すべきでしょう。少数派とはいえ、こんな意見もありました。
○すぐ欲しいとき、電子書籍にしかない本を売っているとき、特典があるときなど。読みたいものは読みたいのであって、価格の比較はあまり意味がない(40代男性)
○絶版になったものや一般の書店で売られていないものが検索可能であれば同等かそれ以上の値段でも購入する可能性はあります(40代男性)
繰り返しになりますが、電子書籍の将来はやはり、品ぞろえにかかっているのです。
回答総数 | 1824 |
---|---|
男性 | 92% |
女性 | 8% |
20代 | 8% |
30代 | 16% |
40代 | 30% |
50代 | 25% |
60代 | 16% |
70代 | 5% |
80代以上 | 0% |
日本経済新聞のフェイスブックページでもご意見を募ったところ、こんなコメントが寄せられました。
○電子書籍ならコンテンツの充実では?紙媒体では出来ないことを沢山して欲しいです。
最後に、電子書籍を一番利用したい端末についてうかがったのですが、米国勢が圧倒的な優位を築いています。33.3%を占めた米アップルの「iPad」が首位で、米アマゾンの「キンドル」(29.3%)が2位でした。米グーグルの「ネクサス7」など基本ソフト(OS)が「アンドロイド」の端末も10%を占め、デビューしたばかりの米マイクロソフトのOS「ウィンドウズ8」を使った端末も5.5%でした。
端末の種類で考えると、iPadを中心にカラーの液晶画面を備えた多機能端末が優勢。これは書籍の品ぞろえが十分とはいえないことの裏返しでもあります。品ぞろえ次第で、目に優しい画面を使う電子書籍専用の端末も盛り返す余地があるでしょう。
フェイスブックにはこんな読者のコメントも寄せられました。
○ソニー・リーダーからキンドル・ファイアまですべて購入しています。これからは、ウィンドウズ8の時代。
日本勢ではソニーの「ソニーReader」が健闘しましたが、楽天の「コボ」は存在感を示せていません。
(藤原豊秋)
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