放射性物質の拡散予測ミス、規制委に批判相次ぐ
原子力規制委員会による放射性物質の拡散予測の地図に訂正が相次いだ問題を受け、事務局である原子力規制庁の森本英香次長は30日、「2週間後をメドに原因を究明する」と語り、再発防止策もまとめる考えを示した。拡散予測は原発周辺の地方自治体が防災計画を作る際に参考にする重要な情報。規制委は火消しを急ぐが、能力不足への懸念も強まっている。
森本氏は記者会見で「(能力が足りないといわれれば)指摘の通り」と認め、関係する自治体を中心に「ご迷惑をおかけしたことを改めておわびする」と陳謝した。実際に拡散予測を作成した独立行政法人「原子力安全基盤機構(JNES)」に対し報告を求めることも明らかにした。規制庁はJNESへの業務の委託状況も含めて内部管理体制を再点検する。
6原発で高い放射線量の地点のずれなどがあった地図の誤りに気付いたのは北陸電力。北陸電は規制庁に志賀原発(石川県)の気象データを提供しており「(風向きと)予測地図が異なるのではないか」と連絡したという。規制庁が安全対策を指導しなければならない電力会社からミスを指摘される失態に、政府内からも「極めて残念」(藤村修官房長官)などと厳しい声が広がる。
地図上の訂正の対象となった自治体からも批判が相次いだ。泉田裕彦新潟県知事は「規制委の能力に疑問符がつくことになりかねない」と懸念を表明。長岡市の森民夫市長は30日午前の記者会見で「(規制委から)今日になっても謝罪の電話1本ないのは常識がない」と切り捨てた。原子力規制庁は「新潟県には連絡した」(原子力防災課)と釈明。市町村には県から説明してもらうとの考えが背景にあり、直接の連絡を求める市町村との認識にずれがある。
9月に発足した規制委では田中俊一委員長を含む5人の委員人事が国会の同意を得ていない状態が続く。独立性を保つうえで情報の収集や公開の能力に疑問符がつけば、原子力行政への信頼回復は遠い。藤村官房長官は「さらなる混乱を招くことのないよう真摯かつ丁寧な説明をしていただきたい」と注文をつけた。
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