日本、敗退で必要な反骨心 「脅かす」をテーマに
日本のブラジルでのひのき舞台はあっけなく終わってしまった。24日(日本時間25日)行われたサッカーのワールドカップ(W杯)1次リーグ最終戦で、日本はコロンビアに1-4で完敗。今大会1分け2敗の勝ち点1で1次リーグ敗退が決まった。選手たちが自信を持って臨んだ大会で、突きつけられた厳しい現実。前回2010年南アフリカ大会で16強に進出し、その後に就任したザッケローニ監督の下で着実に進化して世界との距離も縮まったと考えられてきたが、それは「幻想」だったかもしれない。
■岡崎ならではのヘディングシュート
コロンビア戦は14日(同15日)のコートジボワール戦、19日(同20日)のギリシャ戦と比べて、一番いいゲームをしたと思う。縦へのパスが次々に通り、選手たちもゴールに向かって労を惜しまずにどんどん走る。残念ながらこれまでの2戦ではあまり見られなかった勇気、アグレッシブさを、この試合は選手たちが存分に発揮した。
17分にPKで先制されてしまったが、前半で危うかったのはこのシーンぐらい。日本は終始攻め続け、前半終了間際に岡崎のヘディングシュートで1-1の同点に追いついた。
このゴールは日本のカウンターが鮮やかに決まった。中盤でボールを奪うと、右サイドの本田に素早く展開。スピーディーなカウンターというのは日本の攻撃の課題だったが、それができたからこそ、本田の前にはスペースが空いていた。
本田はドリブルでペナルティーエリア近くに持ち込むと、切り返して2人のディフェンスをかわして、ゴール前に飛び込んできた岡崎に左足でクロス。あの位置まで持ち込めたから、精度の高いパスを送ることができた。
もっとも岡崎でなければ、あのヘディングは決まっていなかったかもしれない。相手ディフェンスがマークについていたが、それをかわしてボールに飛び込み、鮮やかにゴールネットを揺らした。岡崎の真骨頂の得点だった。
■ロドリゲス投入でコロンビアペースに
だが、日本の流れはここまでだった。コロンビアが後半開始からMFロドリゲスを投入すると、完全にコロンビアペースになってしまった。ロドリゲスはフランスリーグのモナコで活躍する22歳の若きタレント。前半は中盤でのボールのおさまりが悪かったが、ロドリゲスの多彩なパスで決定的なシーンを何度もつくられた。
55分にロドリゲスのパスを受けたマルティネスに勝ち越しゴールを許すと、その後の2失点はある意味で仕方がなかったかもしれない。決勝トーナメント進出には点を取りにいくしかなく、日本は前がかりになって攻めていくしかなかったのだから。
■データ上では日本がゲーム支配
日本はこの試合、23本のシュートを放った(うち枠内シュートは13本)。コロンビアは13本(同9本)だったから、倍近いシュートを放ったことになる。ボール支配率も56%と44%で、日本が上回った。
このデータだけから見ると、日本がゲームを支配していたように感じられるが、本当にそうだったのだろうか。23本のシュートを放ったとはいえ、日本が本当に相手に脅威を与えた場面というのは、岡崎が得点を決めたシーンと内田からのパスに飛び込んだ大久保が右足で合わせた65分のシュートぐらい(ゴールの上に外れる)。
「決定力不足」とひと言で片付けてしまうのは簡単だ。でも、それは日本サッカー界にとって長年いわれ続けていること。そうたやすくアルゼンチンのメッシやブラジルのネイマールのようなスーパースターが現れるわけではなく、日本は今のようなサッカーを続けて数多くのチャンスをつくり続けるしかない。
大事なことはシュートだけでなく、パス回しだったり、ゴールに向かっていくスピードだったり、ポジショニングだったり、相手に本当の意味で脅威、ダメージを与えられるようなプレーがどれだけできるか。「脅かす」ということが、日本のサッカーの新たなテーマになるのではないだろうか。
■まだまだ遠い「世界」との距離
前回王者のスペインが1次リーグで敗退したように、今大会はポゼッションを志向するチームの成績があまりよくない。これは、オランダが5バックでスペインを5-1で撃破したように、ポゼッションサッカーへの対応策が世界の中では生まれてきているということなのかもしれない。
ただ、5バックといっても決して守備的というわけではない。スペインから5点を取ったことから分かるように、守るときは守るが、攻めるときは一気にいく。世界の強豪は試合の中で緩急というか、メリハリがある。
日本はギリシャに0-0で引き分け、コロンビアとも前半は1-1と健闘した。だが、冷静に振り返ってみると、ギリシャは退場によって1人少ない10人が相手、コロンビアも本来の先発から8人もメンバーを入れ替えて臨んでいた。
そうした中でも今大会で1勝もできなかったことを考えると、「世界」との距離はまだまだ遠い。組み合わせ抽選で日本がこのグループに決まったとき、強豪が見あたらずにいい組に入ったと感じた人も多いだろうが、W杯の舞台はそんなに甘くはない。出場国はどこも「強い」ということだ。
■アジアの中でシビアな戦い欠かせず
1分け2敗に終わった日本だけでなく、イランも1分け2敗、オーストラリアは3戦全敗で1次リーグ敗退。韓国も2試合終えた時点では1分け1敗で、決勝トーナメント進出は微妙な情勢だ。
このままアジア勢がすべて1次リーグで姿を消すと、現在4.5のアジアの出場枠が今後、減らされるかもしれない。もしそうなって、日本がこのままW杯に出場できなくなってしまうと困るが、アジアの中でシビアな戦いをした方が日本にとってプラスになる。
欧州予選や、南米予選を見ても、このチームがW杯の切符を取れなかったのかと思う国がいくつもある。アジアの中では相手が引いて守ってしまい、日本もそれなりに苦しい戦いをしているが、「やるか、やられるか」といった本当に厳しい戦いはしていない。シビアな戦いの経験値が足りなかったということかもしれない。
「優勝する」と本田が公言していたように、自信を持って臨んだ大会で完敗といっていい結果に終わり、選手たちは打ちのめされているかもしれない。この結果を謙虚に受け止め、もう一度見つめ直すしかない。
■「18年ロシア大会、好成績の順番」
思い返せば、06年のドイツ大会も中田英寿らを擁した日本は「最強」といわれながらも今回と同様、1勝もできずに1分け2敗に終わった。その反骨心から、前回の10年南ア大会では16強入りできたといえるだろう。
日本が初めてW杯本戦に駒を進めた1998年フランス大会は1次リーグ敗退(3戦全敗)、02年日韓大会は16強、06年ドイツ大会は1次リーグ敗退、10年南ア大会は16強、14年ブラジル大会は1次リーグ敗退と、日本は悪い成績といい成績が交互。となると、「次の18年ロシア大会はいい成績の順番」と信じて、これからの4年間を待ちたいと思う。