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日本の若者たちよ、慣れ親しんだ環境から世界へ出よう

MITメディアラボ 石井裕さんインタビュー

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 39歳の時にNTTの研究員から米国のMITに転身し、「タンジブル・ビット」の研究によってコンピューターのインターフェース・デザインに多大な影響を与えた石井裕さん。グローバル化が進むこれからの時代に生き残るための働き方を、日本の若いビジネスパーソンに向けて語ってもらった。

──海外を目指す日本人学生がここ数年減り続け、若者の海外離れが指摘されています。石井さんが教壇に立つ米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボでもそのような傾向はありますか。

そうですね。日本人はほとんど来ません。日本以外のアジアからは非常にたくさん来ますけれども。中国、台湾、韓国、インドの人は強烈なエネルギーとパッションを持って入学してきます。

──アジアの人と比べて日本の若者には何が足りないのでしょう?

足りないのではなく、満ち足りているのだと思います。日本にいればどうにか生活できるし、平和で安全。しかも母国語が使える。しんどい思いをして外国語を学ぶ理由がない。足りすぎて飢餓感を覚える要因がないことが、世界に打って出ようという気持ちを持ちにくくさせているのではないかと思います。

自分のいる環境に不満を持っていて、何とか這い上がろうとしている人たちのハングリー精神はすさまじい。アジアに限らず、どの国もそうです。もちろん、日本にも世界を目指すチャレンジャーはたくさんいます。ただ、相対的に日本人の影が薄い背景の1つには、「豊かすぎる」という要因があると感じます。

同質性が知の創造を阻む

──米国の若者はハングリーですか。

とても複雑な社会ですから、一概に「米国は」という議論は成り立ちません。米国の貧富の差は日本よりも強烈です。富める者と底辺の差が激しい。ただ、チャンスは非常に多い国で、チャレンジする人も多い。肌の色で差別されるようなことは、少なくとも私が身を置く研究の世界ではない。本当に良い仕事をして、それを世界にアピールすれば、どんどん認めてもらえる。私のモットーは「出すぎた杭は打たれない」ですが、米国には出すぎた杭を応援してくれる風土があります。

──日本だと出る杭は打たれ、周りに合わせることが求められます。

米国人は個性を尊重し、独創性を重んじます。ほかの人と違うことを尊ぶだけでなく、人よりももっと良い、もっと面白い、もっとエキサイティングなアイデアを出した人が偉いという価値観がある。だから、子供たちも早くからディベートの教育を受け、自分らしさを大事にして新しいアイデアを提言し、皆に貢献しようとします。

確かに、人と違ったことをすると打たれるという風潮は、アジアでは強いかもしれませんね。年長の男性が最も偉く、女性の活躍を阻む傾向もある。非常に優秀な女性がたくさんいるのに、取締役会に女性が1人もいないという会社はゴマンとあるでしょう。

MITの学生は女子が半分以上を占めます。教授にしても、できるだけ多様な人種に対して広く門戸を開こうと努力しており、同じ実力であれば積極的に女性や黒人、全く異なる世界から来た人などマイノリティーを採用する。それは価値観の異なる人々がぶつかることで、知の創造性が活性化されるという信念を持っているからです。同じような考え方の人がいくら集まっても変革は起こせません。

──個人はどういう意識を持って働くといいでしょうか。

自分にラベルを貼るのをやめましょう。何をやるにしても、クリエーティブであろうとしたら、自分の肩書や専門にこだわってはいけない。例えば、「自分はエンジニアだから技術だけ分かっていればいい。アートのコンセプトへの貢献は期待されていない」と思った時点であなたは終わっています。仕事というのは総合芸術なのです。ルネサンス的人間でなければ、ある次元より高いところへは行けない。エンジニアだって社会や文化に対する造詣は必要です。さらに、自分の中にアーティスティックな美学がなかったら、思いも何も人に伝わらない。

私はエンジニアですが、アーティスト、デザイナー、サイエンティストでもあります。さらに研究資金を集める時はビジネスパーソンであることを求められます。そのすべてを演じている。エンジニアとアーティストの価値観は違う。サイエンティストの価値観も違う。アートの世界のアイデアをどうやってサイエンティストにも伝え、感銘を与えられるか。さらに、それをビジネスの世界にどう転じるか。そのためには翻訳能力も必要でしょう。

──日本のビジネスパーソンは目の前の仕事に追われ、ルネサンス的人間になる余裕がないかもしれません。

最近はあまりにも短いスパンでしか、ものを考えなくなっています。次の四半期は目標を達成できるだろうか、次の株主総会をどう乗り切ろうか、と。いきおい、自分たちが一番強い分野にリソースを集中してやっていこうとしている。短期的に見れば一番良い戦略でしょうが、自分たちの強みは10年後に消えてしまうかもしれない。例えば、音楽を楽しむ媒体は、レコードからCD、MP3…とドラスチックに変化しました。レコード針はもはや一部愛好家だけのもの。そういう変化を乗り越えて、自分の会社が輝き続けるにはどうすべきかという視点を持てば、全く違った戦略が出てくるはずです。

私は200年後を考えて戦略を立てることをお勧めします。2200年の社会をイメージしてください。自分は既に死んでしまっていて、自分のことを覚えている子供たちも多分もういない。そういうはるか先の未来を考えながら仕事をしてください。時空を超えることで、単に忙しいだけの日々から逃れられます。

──200年後を考えて働くとして、ご自身の人生の時間軸をどのようにとらえているのですか。

私は今、56歳です。日本人男性の平均寿命まであと20年しかないので、毎日必死です。時間とエネルギーが惜しいから、睡眠時間と食事の時間をぎりぎりまで削り、努力している。「人の2倍働いて、3倍の成果を出す」も私のモットーの1つです。

自分が死んでしまった後も残るようなアイデアやコンセプトを生み出したい。ライフスパンを超えた概念をたくさん出せたらいいなと思っています。

──相容れない考えかもしれませんが、「ワークライフバランス」についてどう思われますか。

とても立派で、健全だと思います。人それぞれ価値観は多様です。すべての人に私のようにやれと言うつもりはありません。そもそも、こんなしんどいことを必死になってやる人もあまりいないでしょうし、やれる人もそんなにいない。皆ができたら、私の商売は上がったりですよ。

インバランスも大事

ただ、本当にやりたいことがある人、やることがとても大切だと信じている人、そして、やれるだけのエネルギーがある人にとって、インバランス、つまりバランスが取れていない緊張感も非常に大事です。過労死しろとか、家庭をないがしろにしろと言っているのではないですよ。ただ、バランスを優先するとジャンプしにくくなる。バランス自体がある種、ボトルネックになる側面もあります。

それに日本人全員がバランスを取った時、日本はそれでいいのかとも思います。組織が進化していくためには、遺伝子を突然変異させる何%かの突出した「個」が必要だと思います。

──若い読者に向けてメッセージをお願いします。

20代、30代の方は、私より20年、30年長く生きられるわけで、ぜひそのことの大切さを意識してください。そして、感性が豊かで知的吸収力が最も高い時に異文化に飛び込んで、知的な刺激を自分に与え、新しい環境に適応する力を鍛えてください。

「進化論」のチャールズ・ダーウィンはこう言っています。「最も強い種族が生き残るわけではない。最も知能が高い種族が生き残るわけでもない。変化に対応できる種族が生き残るのだ」と。適応力こそがこれからの時代を生きていくために一番大事な力です。

石井 裕さん
 米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ教授・副所長1956年生まれ。北海道大学大学院情報工学専攻修士課程修了後、電電公社(現NTT)に入社。NTTヒューマンインターフェース研究所での研究が注目され、95年、39歳でMITの教授に就任。情報に直接触れることができるコンピューターの新しいインターフェース「タンジブル・ビット」を生み出す。2008年、MITメディアラボの副所長に就任。

(日経ビジネスアソシエ 上田真緒)

[日経ビジネス Associe2013年1月号の記事を基に再構成]

日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 01月号 [雑誌]

著者:
出版:日経BPマーケティング
価格:630円(税込み)

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