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なぜクルマを運転する機会が減ったのだろう

レーシングドライバー 中嶋一貴

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皆さん、初めまして。

11月4日、鈴鹿サーキットのフォーミュラ・ニッポン最終戦で2012年チャンピオンをようやく決めることができました。F1世界選手権から国内レースに復帰した後の昨シーズンは2位に終わり、タイトルを必ず取ると有言実行でのぞんだ今年。数人が優勝争いに絡むとても厳しいシーズンでしたが、応援してくれた方々のおかげでタイトルを取ることができました。ありがとうございました。

さて、僕はレーシングドライバーとして2006年に欧州F3に参戦して以降、ドイツや英国を拠点に活動していました。F1にフル参戦した08年、09年も多くを車で移動しながら各サーキットを転戦していました。

車を運転するのはやはり好きです。車内は自分だけの空間で、一番落ち着ける場所だからです。欧州F3に参戦する前も、国内ではよく運転していました。レースを除く、公道での走行距離も3年で10万キロはいっていたと思います。

ところが、国内レース復帰で帰国して以降は、残念ながら車を運転することが減りました。例えば、東京から三重県の鈴鹿サーキットまでは400キロほどですが、最近は「新幹線通勤」が多いです。

日本で400キロ走るのは結構、長く感じますが、イギリスではさほど長く感じません。なぜか。欧州での運転環境に慣れてしまうと、日本でのドライブはフラストレーションがたまるのです。

職業柄、人より速く走れるように車に手を加えたり、山道を走るのが好きなのだろうと思われるかもしれませんが、僕は公道ではごく普通のドライバーです。

車は一般の道では新車で買った時が最高の状態だと思っていますから、車をいじるチューニングは基本的にしませんし、山道にドライブに行く趣味もありません。確かに、ライバルのレーシングドライバーのなかには車マニアのような人もいます。僕のような人間は、この世界では珍しいのかもしれません。

公道での一般の運転免許は、18歳の時、高校の卒業試験が終わってから、友人と教習所に通って取りました。最初に乗った車はトヨタのアルテッツァでした。今は、レクサスのCT200というハイブリッド車に乗っています。とても美しい車です。僕はサーキットの外で走る自分の車については明らかに「見た目重視」ですね。

 プライベートには「レース」を持ち込みません。当たり前のことですが、普段の公道での運転はサーキット走行と明確に分けています。時々、友人と一緒にドライブすることはありますが、一人で走りに行くということはまずありません。もちろん、公道でスピードを出して練習することもしません。

普段はごく普通のドライバーだと自他共に認める僕のような人間でも運転していてストレスを感じるのは、なぜなのでしょう。

移動の自由を与えてくれる道具である車は、「動いてなんぼ」だと僕は思っています。だから、渋滞が嫌いです。できるだけ、止まらず、走っていたいのです。ところが、日本では様々な交通ルールや道路事情から、「無駄に止まる」ことが多いのではないでしょうか。

例えば、深夜は誰も通らないような道でも赤信号で止まらなければならない。制限速度が時速100キロの高速道路でも80キロで走らなければならないことがよくあります。これではドライブは楽しめません。楽しめないとなると、長距離の移動はどうしても楽な鉄道や飛行機になってしまいます。

欧州と日本のドライブ環境の違いで感じる最大の違いは、欧州では「車は走って動くもの」という前提で道路が作られていることです。信号は少なく、その代わりに町中には「ラウンドアバウト」があります。ラウンドアバウトは円の中心に近い車が先に行きたい方向に行く優先権を持つという仕組みなのですが、車が他にいなければ止まらなくてもいいので自由に動けます。運転手の主体性に任されているという状況には感動しました。

◆ auto tips 高性能でも走らない…日本のクルマ事情
 日本で車がスイスイ走らない状況はデータで一目瞭然だ。1台あたりの年平均走行距離は1万5000キロ超の英国に対し、日本はわずか9896キロ(99年)。日本自動車工業会などによると、東京での平均時速は19キロでミュンヘンの35キロやロンドンの30キロに及ばない。ノロノロ運転の影響か、燃費の新車カタログ値に対する実燃費の比率は日本で64%どまり。91%の米国や94%のドイツと明暗が分かれる。日本ではせっかく車を買っても、モトを取りにくいことになる。安全に配慮しつつ、車を前に走らせるための規制緩和などを議論する余地がありそうだ。

 信号という仕組みは、赤で止まり青で進むというシンプルなものですが、車も歩行者もあまり考えることなく、半ば機械的に赤で止まり、青で進むというのは危険なことだと思います。

日本は一時停止も多い。徐行すれば済むようなところを、一時停止させられてしまう。しかも、完全に止まっていないという理由で罰金を取られることさえあります。自分では安全運転をしていると思っていても、そういう細かいところで違反切符を切られてしまうと、運転する気も次第にうせてきます。

最高速度100キロでしか走れない日本の高速道路。一律の制限速度には事故が起きた場合の被害を減らすという利点があるのかもしれません。しかし、自分の責任で安全確保につとめながら、移動する自由を楽しむという車の本質を犠牲にしてはいないでしょうか。

日本では「乗用車がなかなか売れない」「若者のクルマ離れが深刻だ」とよく言われます。景気が悪いので、仕方がない部分もあるでしょう。でも、原因はそれだけなのでしょうか。

車が国内でもっと売れれば、景気も上向くはず。そのためには、世界有数の自動車産業を持つ国として、クルマを取り巻く環境やドライバーの意識がもっと成熟する必要があると思います。この連載では欧州での数年間の活動を経て感じることを、皆さんにお伝えしたいと思っています。

 中嶋一貴氏(なかじま・かずき) 自動車レースの国内最高峰、全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの2012年チャンピオン。カートを経て2002年、トヨタが運営するレーシングスクールを受講し奨学生に。03年、初参戦のフォーミュラ・トヨタで年間チャンピオン。06年からF3で欧州を転戦。07年ブラジルグランプリでF1世界選手権への昇格を果たした。08年、09年も名門、ウィリアムズのレギュラードライバーとして出走。11年から国内レースに復帰。今年は国内最高カテゴリーのフォーミュラ・ニッポンに加え、トヨタのハイブリッドレーシングカーで世界耐久選手権(WEC)に参戦した。父は日本人初のF1フル参戦ドライバー、中嶋悟氏。1985年1月11日生まれ、愛知県岡崎市出身。
中嶋一貴のダイレクトメッセージでは読者の皆様のコメントを募集しています。コメントはこちらの投稿フォームからお寄せください。
読者からのコメント
K100RS125 40代男性 東京都
 色々な要因があると思いますが、一番の原因は、法律や規制を作る人が、車を運転しない人だから、です。ですから、これからは車好きが団結して、政界に代表者を送り込みましょう! 中嶋さんも、引退後は選挙に打って出てください(笑)
吉弘 祐樹 40代男性 大阪府
 中嶋さんのメッセージに強く共感を覚えました。私が大学生の頃(もう17年前になります)、ドイツをレンタカーで旅行しました。ドイツの交通ルールの合理性、ドライバーの成熟度に感銘を受けました。当時、日本のクルマを取り巻く環境はドイツよりも10年以上後れていると感じましたが、17年後の日本は相変わらず後れたままのように思います。不合理で非効率な規制、成熟していないドライバーの存在を根本から変えなければ車は売れないと考えます。
わかば 40代女性 栃木県
 本当に同意します。「ドライバーは何が安全で何が危険かも全く判断できない馬鹿だから、お上が何もかも決めて決まりを守らせる必要がある」…これが日本の道路まわりの哲学でしょう。彼らの意図に反して「ずっとスマート」(笑)な私たちは、こんなあほらしい決まりを決めた馬鹿は誰だ!?とフラストレーションをためる一方ですね。道路は納税者である私たちのものです。
40代男性 千葉県
 まさにその通り。田んぼの中の人っ子一人いない一本道の制限速度が40キロだったり、公安委員会が趣味で作ったとしか思えないような不要な信号、乱立する標識など、日本の道路行政は合理性に欠けている。信号を作ったり標識を立てたりすることで、仕事をしている気になっているのではないか。 アメリカをドライブすると直線とカーブで制限速度が違い、その速度も納得できるものだったり、やたらに信号を作らずミラーで対応したりと、非常に合理的だと感じる。ぜひ見習ってほしい。
natureizm 40代男性 東京都
 タイトル獲得おめでとうございます。中嶋選手のおっしゃるとおり、欧州などでクルマを運転すると日本の道路設計のまずいところがよく分かります。また、運転手への教育や指導の不備もよく分かりますね。クルマは移動手段であるという意味を再考すべきでは、というお話は、私も同感です。それに信号機の多さは道路維持費の高さにもつながっています。明日から「ランナバウト」にしろ、とは云いませんが長期的には我が国の道路づくりそのものを見直す必要があると思います。
高橋 健太朗 30代男性 京都府
 待ってました。自動車レース最高峰F1ドライバーの本音。どんどん語って欲しい。
20代男性 岐阜県
 初回から、素晴らしいコラムだと思います。一面に掲載してほしいです。まずは、新東名高速道路の制限速度見直しから提言していきましょう。
Yoshi 20代男性 東京都
 中嶋さんの意見に同感です。私も車の運転が好きですが、日本の道を走っているといつも「違反していないか」「警察に見られていないか」と言うことばかり気にしてしまい、運転そのものを楽しむということは難しいと感じています。  もう少し実情に合わせたルールになるよう、道路交通法の改正を望んでいます。ぜひ、これからも中嶋さんの目線で情報発信をよろしくお願いします。
惣菜や 50代男性 千葉県
 全くその通りだと思います。夢をつぶす、運輸、交通行政、警察。それを無批判に受け入れ、さらに車は悪であると報道する新聞。全く夢を作れない商売屋の自動車メーカー。車とは実用上は移動の手段だが、購買動機は夢である。家族とキャンプやバーベキューに行って、楽しみたい。彼女を乗せて、景色のきれいなところをドライブしたい。車が売れないのではなく、売れない社会を必死に作っている日本。
ひろちゃん 40代男性 東京都
 まさに、ここ20年間考えていたことです。免許取得以来、車好きで10台以上乗り継いできましたが、渋滞と維持費の高さ、都心では不便無い交通手段などもあり、車を売ってしまいました。一番許せないのは、車は止まると思い、横断歩道を渡らない老人、でもすぐ20メートル先には赤信号の交差点。まさに制度面や利用者の事を考えないとこの国の主力産業は衰退する。
林 20代男性 埼玉県
 Super GTやF1でよくお目にかかっていたので、日経にコラムが載っていて大変嬉しく思い、投稿させて頂きます。 私自身、毎日のように車を運転するので、中嶋さんの考え方に共感できる部分が多かったです。私も車を運転するのが大好きです。レースもF1も大好きで、放送を必ず見ています。鈴鹿サーキットにも行き、コースも走りました。  このコラムを通じ、20代の若者にドライブの楽しさ、運転する喜びをもっともっと多くの人に知ってもらえればなと思います。
なおぽん 30代男性 神奈川県
 無駄な信号が多いというのに強く共感します。私の家の近くにある歩行者信号ですが、深夜誰も渡らないのに赤になり止められてしまいます。こんなところに信号なんかいらないぜ!!むなしくなります。 信号機の数は年々増えています。何故なら信号機を設置することによって給料をもらう人たちがいるからです。車が売れないのは不景気のせいもあると思いますが、運転してて楽しくないという理由もあるんでしょうね。
40代男性 東京都
 高速道路の制限速度設定は必要だと思いますが、取り締まり含めた現実に合わせるべきです。制限速度で走ると低速度違反かと感じるくらい常に流れが20キロオーバーで取り締まられない区間があったりする。オーストラリアの高速道路は常に走行車線は制限速度、追い越し車線はせいぜい5キロオーバーで走ります。なぜなら厳密に違反切符をもらうから。それも休日期間中とかはペナルティが倍だったりする。子供になぜ日本では高速道路の制限速度は守らなくても捕まらないのかを聞かれると返答に困る。
gogomini 60代男性 神奈川県
 沢山の共感することが有りますが、一時停止については反論させて貰います。住宅街の見通しの悪い四つ角で、一時停止を守らないドライバーがあまりにも多すぎます。そのせいで、恐怖の思いをしている歩行者が大勢居ますし、車を運転中のドライバーにとっても一緒です。一時停止処か徐行もせずに飛び出して来るんですから、避けようが有りません。此れが日本の実情です。
HEKIMAZRX3 50代男性 奈良県
 正論であると思います。法律の整備された当時と、タイヤおよびブレーキの性能を比較するだけでも、そのままの法規制は根拠に乏しいと思います。 ただし、ドライバーの技量やマナーの低下やモラルの劣化も有り、立法や行政側が安易に法や交通取り締まりを緩和できる状況ではないように思います。誰も責任を取りたがらない国柄でも有りますし。
30代男性 東京都
 本当にそう思います。日本の交通にまつわる仕組や制度全般が、「制限して」「取り締まる」ことを前提として作られている気がします。問題が起こらないように「スムーズに流れる」という発想や概念がなさそうですよね。利用者目線ではなく、取り締まる側・制度をつくる側目線。これでは不便でストレスがたまるだけです。  制限速度や踏切の一時停止など、何十年も昔の基準のまま今も制度が変わらないのは、色々な意味での損失が大きいと思いつつ、今の国政ではそんなことが変わる期待すらもてませんね。ただ変わってほしいです。
トラジロウ 60代男性 東京都
 久し振りにそうだと喝采をあげたくなりました。私も仕事や遊びで年に3,40日海外に行き多くは運転しますが、指摘されたと同じ感情をいつも感じていました。とにかく日本は止めよう、遅くしよう、という連続なのです。法令と道の作りが。保険(事故った場合低すぎる)と刑法の改善(軽すぎる)の対応に比重を変えるなど事故を少なくする手立てを変えるべき。また教習制度も今時あんなところに集めて有効なんでしょうか。ウエブ上でテストし免許を更新しないなど今時出来るんではないでしょうか。
vermouth08 20代男性 京都府
 文化の違いがあると思います。欧州の道路事情は、いい考えだと思いますがこの小さな島国でそこまで急ぐ必要もないと思います。成熟とは少し考えが違うのかもしれませんし、規制を守っていれば、罪が軽減されるという考えも一つ。規制がないから罪も重いという考えも一つ。  私は、信号が多いし都市部では交通機関の利便性が高いので、郊外移動しか車は必要ないと思っています。ただ、日本には誇れる技術があるという事には自信を持つべきだと思います。
40代男性 東京都
 おっしゃるとおり、道路事情に問題は多々あると思います。と同時に、カーナビで地デジやDVDや携帯画面見たり通話しながらの運転。ATにより運転が娯楽の付録になったしまってる状況も問題だと思う。またATにより減速が気づきにくくなったり、頻繁なブレーキにより渋滞が増す。ミニバン増加による加速減速の悪化、視界の悪化も気になります。ユーザー側の怠慢も交通事情を悪化させる要因になっている気がします。

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