法相辞任、解散戦略に影 民主にくすぶる先送り論
外国人献金や過去の暴力団との交流問題を抱える田中慶秋法相が23日、辞任し、野田佳彦首相の政権運営に打撃を与えた。事実上の更迭だが、首相も就任から3週間余りの辞任に任命責任を認めざるを得なかった。内閣や政党支持率が低下する中、民主党内では衆院解散の先送り論がくすぶり、首相の解散戦略にも影を落としている。
首相が法相の後任に起用する方針を固めた滝実氏は9月25日の記者会見で「僕自身は年だから、できるだけ外してもらった方がよい」と述べ、内閣改造での続投を望まず今期限りでの引退も表明していた。藤村修官房長官が兼務する方向となった拉致問題担当相の人事とともに、緊急避難的な色彩が濃い。
首相は23日、官邸で記者団に「私が任命した閣僚が職務を全うできなかったという意味では責任はある」と語り、任命責任を認めた。「内閣全体で職務にまい進することで責任を果たしていきたい」とも述べ、政権維持に意欲を示した。
支持率の低下を懸念し、民主党内には衆院解散の先送り論が出ている。
早期解散に否定的な輿石東幹事長は23日の参院役員会で、首相が19日の自民、公明両党首との会談で協力を求めた赤字国債発行法案など3課題に関し「3課題だけが成立すれば即解散ということではない」と述べた。
岡田克也副総理も23日の記者会見で「これを処理すれば即座に衆院解散するというものではない」と述べた。
一方、前原誠司国家戦略相は3課題が整えば直ちに解散すべきだとの考えだ。年内解散を求める自公両党に配慮したメッセージで、解散と3課題の関係の解釈で政府・民主党内に濃淡がある。
野党は23日も首相を攻撃した。自民党の細田博之総務会長は記者会見で「よく議員の身辺を調べてから閣僚に任命すべきだ。大いに反省すべきだ」と批判。公明党の山口那津男代表は記者団に「任命権者の首相の責任も問われる」と語った。
自公両党は田中法相の辞任で年内の衆院解散に向けて弾みをつけたい考え。首相は29日に召集する予定の臨時国会で、解散権を最大限活用して与野党の協力姿勢を見極める構えだ。
首相は23日に会談したたちあがれ日本の平沼赳夫代表に対し、解散時期について「そんなにいつまでもやっているつもりはない」と言明。政権延命のために解散時期を引き延ばすことはしないとの考えを伝えた。