自民5氏、デフレ対策で論戦 林氏「変動相場制見直しも」
総裁選公開討論会
自民党総裁選に立候補した5氏は15日、日本記者クラブ主催の公開討論会でデフレ克服や円高対策、外交・安全保障などの分野で主張を戦わせた。安倍晋三元首相は、政府が消費税率の引き上げを最終判断する2013年秋にデフレから脱却できていなければ、増税を先送りすべきだと強調。林芳正政調会長代理は円高対応として、日米欧に中国を加えた通貨協調体制の構築を訴えた。
8月に成立した社会保障と税の一体改革関連法は、消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に上げるとする一方、「経済状況の好転」を付則に規定している。
安倍氏は消費増税について「時期を間違うと結果として経済の腰を折ってしまう。デフレが続いているなら上げるべきではない」と主張。橋本政権下の97年に消費税率を3%から5%に上げた後、景気が悪化したことに「反省しなければならない」と言及した。
安倍氏は石原伸晃幹事長に「デフレが続いている。名目と実質(成長率)が逆転したままでも増税するのか」と質問した。石原氏は雇用対策などを取れば「14年に8%に上げることは可能だ」と述べた。
林氏は「消費税を上げなかった場合、プライマリーバランス(基礎的財政収支)がどうなるのか」と増税先送りに疑問を投げかけた。
日銀との政策協調も争点となった。安倍氏は日銀が物価目標を掲げるための日銀法改正に言及した。石破茂前政調会長は物価目標を達成できなかった場合、政府に報告する義務を負う英中銀を「一つのモデルだ」と指摘。林氏は望ましい物価上昇率の目標値を「米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)並みの2%だ」と強調した。
林、石原両氏は円高克服のための為替政策を議論した。林氏は「変動相場制の見直しまで踏み込み、中国も入れたマクロの枠組みをつくる必要がある」と主張。各国間で通貨の変動を一定の範囲に抑える「スネーク制度」を念頭に、日米欧中の協調体制の構築を訴えた。石原氏はアジア諸国の通貨と米ドルとの連動を遮断するため、アジアで新たな通貨体制をつくるべきだとの持論を展開した。
町村信孝元外相は社会保障費について「毎年1兆円以上増えていくことを黙って見てていいのか」と述べ、給付抑制策の必要性を訴えた。公的年金の支給開始年齢に関しては「65歳で止めていいのか。その先の話は避けて通ることは許されない」と引き上げを求め、石破氏も同調した。
町村氏は防災・減災を目的とする大型公共事業については「東南海や首都直下型地震で相当数の犠牲者が出るのに、手をこまぬいていいのか」と強調した。